「本って、何度でも人生に寄り添ってくれるのよ」─黒柳徹子さんが語る、時をこえてよみがえる本と想い出

「本って、何度でも人生に寄り添ってくれるのよ」─黒柳徹子さんが語る、時をこえてよみがえる本と想い出

インタビュー・対談

2025.04.30

50年目の「徹子の部屋」とともに、ふたつの大切な本が帰ってきました。
『トットのピクチャー・ブック』と『トットちゃんとカマタ先生のずっとやくそく』──それぞれに込められた“書くこと”と“子どもたちへのまなざし”。
長年語り続け、書き続けてきた黒柳徹子さんが、あらためて語る「言葉の力」と「約束の意味」とは?

写真/下村一喜 文/編集部

初めての「書く仕事」は、作文でよかったんです

──まずは『トットのピクチャー・ブック』、40年ぶりの復刊ですね。

はい、もう本当にうれしくて。これは、私にとってとても思い出深い本なんです。女優としてのお仕事が始まったばかりの頃にいただいた、初めての「書く」お仕事で生まれたんです。最初は「そんなの無理です」って思って、何度もお断りしたんですけど、飯沢匡先生がね、「作文でいいんですよ」っておっしゃってくださって。その一言で、気持ちがふっと軽くなったのを、今でも覚えています。

──“書くこと”に不安はなかったですか?

ものすごくありました(笑)。だって私は、作家さんでもなんでもないし、当時は「書く」というのはプロの作家や先生がすることだと思ってましたから。でもね、「ふだんおしゃべりしていることを、そのまま書いていいんですよ」って言われて、あ、だったら私にもできるかもしれないって思えたんです。そうして書いたエッセイが「6音6画」や「放射線」という連載になって、それをまとめたのがこの本なんです。

言葉と絵がぴったり合った、幸せな本

──武井武雄さんの絵も、印象的です。

はい、私ね、武井先生の絵が大好きだったんです。あまりに上手で、というか素晴らしくて、ご一緒できるだけで光栄でした。武井先生の描く絵って、どこか詩があって、優しさがあるでしょう? 私の文章とも、ぴたっと合って、本当に幸せな本ができたと思っています。

──40年ぶりの復刊。読者にとっても感慨深いですね。

ええ、長いこと絶版になってしまっていて、ずっと残念に思っていました。でも今回、実業之日本社さんから復刊のお話をいただいて、「ああ、またこの本が読まれるんだ」と思うと、とても嬉しかったんです。若い方にも読んでいただけたらいいなって思います。九官鳥の話なんかね、今の子どもたちにもきっと楽しんでもらえると思いますよ。

「ずっとやくそく」は、子どもたちへの“応援の本”

──『ずっとやくそく』も、いま読み返すと深いですね。

ありがとうございます。あの本は、鎌田實先生との共著なんですが、私にとっても特別な本なんです。子どもの頃に通っていたトモエ学園の校長先生との「先生になる」という約束、それは戦争で果たせなかったんですけど、その気持ちだけはずっと心の中にあって。子どもたちに何か役に立ちたい、力になりたいという気持ちで書かせていただきました。

──読者層も幅広いですよね。

そうですね。子育て中のお母さんやお父さん、そしてこれからおじいちゃんおばあちゃんになる方たち、みんなに読んでほしいと思って書きました。いろんな困難に出会ったとき、「私のままでいいんだ」と思ってもらえるような、そんな一冊になっていたら嬉しいですね。 私は昔から、子どもって本当に健気で、文句ひとつ言わずに一生懸命生きてるなって、いつも思ってるんです。だからこそ、大人は子どもたちを裏切っちゃいけない。そういう想いも込めています。

50年の「徹子の部屋」、そして“本”の魅力

──今年で『徹子の部屋』も50年ですね。

そうなんです(笑)。私もびっくりです。最初はまさか50年も続くなんて思っていませんでしたけど、ゲストの皆さんと、見てくださる皆さんのおかげで、なんとかここまで続けてこられました。

──長年、話を「聞く」お仕事をされてきた徹子さんが、「書く」ことで感じたこととは?

「話す」と「書く」って、似ているようでちょっと違うところがあるんですよね。でも、どちらも“誰かに何かを伝えたい”という気持ちから生まれている点では、同じだと思うんです。本にすると、自分の想いや記憶が、ずっと残りますし、何より、読む人が自分のタイミングで受け取れるところが、素敵ですよね。

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

本って、一度読んで終わりじゃないんですよね。同じ本でも、読む年齢や時期によって、感じ方がまったく違うんです。だからこそ、何度でも読み返してほしいなと思います。今回復刊したこの2冊も、どこかで誰かの心に届いてくれたら、こんなにうれしいことはありません。