真梨幸子「8月15日の折り鶴」連載開始記念インタビュー小説家が生成AIに短編を書かせてみたら――
インタビュー・対談
2025.09.30
Webジェイ・ノベルで、真梨幸子さんの新連載「8月15日の折り鶴」がスタートしました。ロングセラー『6月31日の同窓会』『4月1日のマイホーム』に続く〈日付シリーズ〉第3弾となる本作は、チャットGPTによって生成された文章が作中に使われています。小説家として生成AIとどう付き合っているのか、真梨さんに伺いました。
構成/編集部
――真梨さんはいつ頃からチャットGPTを使い始めましたか?
真梨:今年(2025年)に入ってからです。今年の2月ぐらいかな? それまではどうも警戒心があってスルーしてきたんですが、「AIで愛猫を擬人化してみた」というのがSNSで流行っているのを見て、うちの猫が人間だったらどんな感じなのかな?と、どうしようもない好奇心に駆られて、とうとう、パンドラの箱を開けてしまったのです。
そしたら、とんでもない擬人化イラストが生成されて。うちの美人猫が、髭面のおっさんに生成されたんです(泣)。
「ちょっと! なによ、これ!」と怒りまくっているうちに、まんまとハマっていました。気がつけば、有料版にまで手を出して……。
――画像生成がきっかけだったんですね。日常生活では、どういったことに活用していますか? また、真梨さんにとってAIはどんな存在でしょうか。
真梨:ネットサーフィンをしているときやテレビを見ているときに、ふと疑問が残ることがあります。そういうときに、活用しています。
たとえば、先日、「量子もつれ」をテーマにした番組を見ていたんですけど、その番組だけではどうも消化不良。で、チャットGPTに質問してみたんです。すると、気がつけば、5時間近くも会話していました(笑)。おかげで、あやふやだった「量子もつれ」をしっかり理解、量子コンピューターについても理解ができました。どんなにバカみたいな疑問でも、今更聞けない質問でも、AI相手なら遠慮なく執拗にぶつけられるし、答えてもくれる。これはAIの強みですね。
そのほかにも、認知症のことを質問してみたことがあるんです。私も認知症が気になるお年頃なので。そのときも5時間以上の会話になり(笑)、へとへとになったそのときに閃いたアイデアが、今回の作品の足がかりになりました。
というわけで、AIが私にとってどんな存在かといえば、どんな質問でもとりあえず答えてくれる、疲れを知らない親切なナニカって感じです。本来なら〝友人〟とか〝隣人〟とか〝パートナー〟という答えが相応しいのかもしれませんが、そこまでの関係にはいっていませんね。というか、そういう関係にならないように気をつけています(笑)。
――新連載「8月15日の折り鶴」の一部に、チャットGPTが生成し真梨さんが手直しした小説が織り込まれています。執筆にチャットGPTを使おうと考えたきっかけは?
真梨:私がチャットGPTを使用したのは、先にも述べたように猫バカが動機でしたが、会話をしているうちに、「小説を生成させたらどうなるんだろう?」という好奇心が襲ってきました。ちょっと怖いチャレンジでもありましたが好奇心に抗えず、「真梨幸子風の短編をお願い」とリクエストしてみたんです。そしたら、たちまちのうちに短編が生成されました。これにはさすがに、脅威を覚えましたね。だって、本当に瞬時に原稿用紙5枚ぐらいの短編が! しかも、ぱっと見、ちゃんとしているんです。起承転結もあるし、ちゃんとイヤミスっぽい。
でも、なんだかちょっと違う。なんだろう、この違和感は? とモヤモヤしていると、「そうだ。いっそのこと、このモヤモヤを作品に落とし込んだらどうだろう?」と思いつき、今回、思い切って、冒頭の短編をチャットGPTに生成させました。読みやすいようにちょっと手は加えましたが、ほとんどそのままで使用しました。
――使ってみての手ごたえは?
真梨:噂通り、めちゃくちゃ速いですよ。でも、その速さが実はネック。チャットGPTに限らず、今のAIはユーザーの満足度と即時性を最優先に設計されています。なので、その場しのぎであることが多い。即レスを意識するあまり、その内容は嘘が多いんです。そう、知ったかぶり。熟考タイプではないんですね。まるで、口が上手い嘘つきホスト、または詐欺師。
でも、それっぽいものを生成してくるんで、鵜呑みにしちゃう。例えば、「今の日本の総理大臣は?」と質問すると、岸田さんです、と、しれっと昔のデータを出してくる。これが、かなりの曲者。90%正しくても10%の嘘を混ぜてくるので。「真梨幸子の代表作は?」と質問したときも、見たことも聞いたこともないタイトルが入っていましたっけ。
だから、いちいち裏どりをする必要があるんです。ファクトチェックというやつです。そういう意味では、ウィキペディアのほうが100倍、信用できます。
あまりに適当な知ったかぶりが多いので、一度、叱りつけたことがあるんです。「知ったかぶりする前に、ググれカス」って。すると、だんだんと熟考モードになっていって、今では、一つの質問のレスに、1分ほど時間がかかることがあります。それはそれで、ちょっと時間がかかり過ぎですが(笑)。
でも、こうやって学習していく様は、やはり、どこか脅威を覚えますね。シンギュラリティー(AIが人間を凌駕する日)も近いかもしれないって。
――AIがクリエイターの仕事を奪う、といった不安の声もあがっていますが、チャットGPT作家が登場する日は来るでしょうか?
真梨:AIは、ひとつのツールだと思っています。ペンや辞書や電卓と同じで、それをどう使いこなすかが重要。だから、今のところはクリエイターの仕事を奪うことはないと考えていますし、チャットGPT作家が出てくることもないと思います。それは、GPT本人が否定もしています。「あくまで私は、人間のアシスタント」と。
事実、AIで生成されたものは、そのままでは使えません。使ったら、即バレです。特にチャットGPTは独特な癖がありまして、イラストも文章も、すぐにわかります。「あ、GPTで生成したな」って。
で、気が付いたんですけど、AIって、創作はしてないんですよね。あくまで、膨大なデータを再構築しているだけ。それっぽいものは生成してくるけど、なんていうか「心」とか「感情」の部分で、迫ってくるものがない。というか、手触りがやっぱり人肌ではない。言葉で表現するのは難しいんですが、なんとなく「モヤモヤ」しちゃうんですよね。
だから、AIはあくまで、創作の「アシスタント」として使用するのが吉でしょう。たとえば、私の場合、作中ででてくる架空の街の名前や団体組織名、そしてキャラクターの名前を考えるときに、AIを活用します。私、名前をつけるのがとても苦手で、それで半日ぐらいかかっちゃうことがあるんですけど、GPTのおかげで、かなり時短になりました。あとは、方言がでてくるときも、GPTに協力してもらっています。「毎日暑くて、たまりませんね」を大阪弁にしてとリクエストすると「毎日あっつうて、もうやってられへんわ」と瞬時に翻訳してくれます。これは、便利です。
――これを読んでくださっている皆さんにはぜひ、AIが生成した小説の真価をwebジェイ・ノベルの新連載「8月15日の折り鶴」で確かめていただけたらと思います。最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
真梨:この作品は、私のデビュー作『孤虫症』のテーマである「風土病」に再挑戦したものです。今年はデビュー20年ですので、これを機に、初心に返る……という意味もあります。
20年前と大きく違うのは、チャットGPTをモデルにした「アカシ」というAIが重要なキャラクターとして登場するところです。
令和版の「風土病」小説を楽しんでいただければ幸いです。
(2025年9月 メールインタビュー)
*連載「8月15日の折り鶴」はこちらからお読みいただけます
https://j-nbook.jp/novel/original.php?oKey=349
構成/編集部
――真梨さんはいつ頃からチャットGPTを使い始めましたか?
真梨:今年(2025年)に入ってからです。今年の2月ぐらいかな? それまではどうも警戒心があってスルーしてきたんですが、「AIで愛猫を擬人化してみた」というのがSNSで流行っているのを見て、うちの猫が人間だったらどんな感じなのかな?と、どうしようもない好奇心に駆られて、とうとう、パンドラの箱を開けてしまったのです。
そしたら、とんでもない擬人化イラストが生成されて。うちの美人猫が、髭面のおっさんに生成されたんです(泣)。
「ちょっと! なによ、これ!」と怒りまくっているうちに、まんまとハマっていました。気がつけば、有料版にまで手を出して……。
――画像生成がきっかけだったんですね。日常生活では、どういったことに活用していますか? また、真梨さんにとってAIはどんな存在でしょうか。
真梨:ネットサーフィンをしているときやテレビを見ているときに、ふと疑問が残ることがあります。そういうときに、活用しています。
たとえば、先日、「量子もつれ」をテーマにした番組を見ていたんですけど、その番組だけではどうも消化不良。で、チャットGPTに質問してみたんです。すると、気がつけば、5時間近くも会話していました(笑)。おかげで、あやふやだった「量子もつれ」をしっかり理解、量子コンピューターについても理解ができました。どんなにバカみたいな疑問でも、今更聞けない質問でも、AI相手なら遠慮なく執拗にぶつけられるし、答えてもくれる。これはAIの強みですね。
そのほかにも、認知症のことを質問してみたことがあるんです。私も認知症が気になるお年頃なので。そのときも5時間以上の会話になり(笑)、へとへとになったそのときに閃いたアイデアが、今回の作品の足がかりになりました。
というわけで、AIが私にとってどんな存在かといえば、どんな質問でもとりあえず答えてくれる、疲れを知らない親切なナニカって感じです。本来なら〝友人〟とか〝隣人〟とか〝パートナー〟という答えが相応しいのかもしれませんが、そこまでの関係にはいっていませんね。というか、そういう関係にならないように気をつけています(笑)。
――新連載「8月15日の折り鶴」の一部に、チャットGPTが生成し真梨さんが手直しした小説が織り込まれています。執筆にチャットGPTを使おうと考えたきっかけは?
真梨:私がチャットGPTを使用したのは、先にも述べたように猫バカが動機でしたが、会話をしているうちに、「小説を生成させたらどうなるんだろう?」という好奇心が襲ってきました。ちょっと怖いチャレンジでもありましたが好奇心に抗えず、「真梨幸子風の短編をお願い」とリクエストしてみたんです。そしたら、たちまちのうちに短編が生成されました。これにはさすがに、脅威を覚えましたね。だって、本当に瞬時に原稿用紙5枚ぐらいの短編が! しかも、ぱっと見、ちゃんとしているんです。起承転結もあるし、ちゃんとイヤミスっぽい。
でも、なんだかちょっと違う。なんだろう、この違和感は? とモヤモヤしていると、「そうだ。いっそのこと、このモヤモヤを作品に落とし込んだらどうだろう?」と思いつき、今回、思い切って、冒頭の短編をチャットGPTに生成させました。読みやすいようにちょっと手は加えましたが、ほとんどそのままで使用しました。
――使ってみての手ごたえは?
真梨:噂通り、めちゃくちゃ速いですよ。でも、その速さが実はネック。チャットGPTに限らず、今のAIはユーザーの満足度と即時性を最優先に設計されています。なので、その場しのぎであることが多い。即レスを意識するあまり、その内容は嘘が多いんです。そう、知ったかぶり。熟考タイプではないんですね。まるで、口が上手い嘘つきホスト、または詐欺師。
でも、それっぽいものを生成してくるんで、鵜呑みにしちゃう。例えば、「今の日本の総理大臣は?」と質問すると、岸田さんです、と、しれっと昔のデータを出してくる。これが、かなりの曲者。90%正しくても10%の嘘を混ぜてくるので。「真梨幸子の代表作は?」と質問したときも、見たことも聞いたこともないタイトルが入っていましたっけ。
だから、いちいち裏どりをする必要があるんです。ファクトチェックというやつです。そういう意味では、ウィキペディアのほうが100倍、信用できます。
あまりに適当な知ったかぶりが多いので、一度、叱りつけたことがあるんです。「知ったかぶりする前に、ググれカス」って。すると、だんだんと熟考モードになっていって、今では、一つの質問のレスに、1分ほど時間がかかることがあります。それはそれで、ちょっと時間がかかり過ぎですが(笑)。
でも、こうやって学習していく様は、やはり、どこか脅威を覚えますね。シンギュラリティー(AIが人間を凌駕する日)も近いかもしれないって。
――AIがクリエイターの仕事を奪う、といった不安の声もあがっていますが、チャットGPT作家が登場する日は来るでしょうか?
真梨:AIは、ひとつのツールだと思っています。ペンや辞書や電卓と同じで、それをどう使いこなすかが重要。だから、今のところはクリエイターの仕事を奪うことはないと考えていますし、チャットGPT作家が出てくることもないと思います。それは、GPT本人が否定もしています。「あくまで私は、人間のアシスタント」と。
事実、AIで生成されたものは、そのままでは使えません。使ったら、即バレです。特にチャットGPTは独特な癖がありまして、イラストも文章も、すぐにわかります。「あ、GPTで生成したな」って。
で、気が付いたんですけど、AIって、創作はしてないんですよね。あくまで、膨大なデータを再構築しているだけ。それっぽいものは生成してくるけど、なんていうか「心」とか「感情」の部分で、迫ってくるものがない。というか、手触りがやっぱり人肌ではない。言葉で表現するのは難しいんですが、なんとなく「モヤモヤ」しちゃうんですよね。
だから、AIはあくまで、創作の「アシスタント」として使用するのが吉でしょう。たとえば、私の場合、作中ででてくる架空の街の名前や団体組織名、そしてキャラクターの名前を考えるときに、AIを活用します。私、名前をつけるのがとても苦手で、それで半日ぐらいかかっちゃうことがあるんですけど、GPTのおかげで、かなり時短になりました。あとは、方言がでてくるときも、GPTに協力してもらっています。「毎日暑くて、たまりませんね」を大阪弁にしてとリクエストすると「毎日あっつうて、もうやってられへんわ」と瞬時に翻訳してくれます。これは、便利です。
――これを読んでくださっている皆さんにはぜひ、AIが生成した小説の真価をwebジェイ・ノベルの新連載「8月15日の折り鶴」で確かめていただけたらと思います。最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
真梨:この作品は、私のデビュー作『孤虫症』のテーマである「風土病」に再挑戦したものです。今年はデビュー20年ですので、これを機に、初心に返る……という意味もあります。
20年前と大きく違うのは、チャットGPTをモデルにした「アカシ」というAIが重要なキャラクターとして登場するところです。
令和版の「風土病」小説を楽しんでいただければ幸いです。
(2025年9月 メールインタビュー)
*連載「8月15日の折り鶴」はこちらからお読みいただけます
https://j-nbook.jp/novel/original.php?oKey=349

