私の○○ベスト3Vol.81 貴戸湊太 私の「読書が捗る場所」ベスト3

コラム

2025.05.20

1位 電車

2位 図書館

3位 自宅


 読書――それは、たった一人で本の世界に没入する行為です。本さえあればどこでだってできることなので、ちょっとした待ち時間や移動時間に行うことができます。カフェで、飛行機で、職場の休憩時間に。様々な場所で読書ができます。震災時の、人がひしめく避難所でも、音を立てずにどこでもできる心の癒しとして重宝されたという話も聞きます。
 ですが、読書をするなら本当にどこでもいいのでしょうか。そんなことはないはずです。この文章をお読みの皆様にも、それぞれに「読書が捗る場所」があるはずです。今回は、私にとってのその場所をご紹介させていただければと思います。

3位 自宅

 やはり読書といえば自宅です。自分や家族だけがいる空間で、リラックスして行う読書は快適です。お気に入りの机で、お気に入りのお菓子や飲み物を添えて、なんていうのは読書好きからすれば堪らない贅沢ですね。黙々と読み続け、少し疲れたなと思ったら横になれるのも自宅の利点です。その横になった体勢のまま、引き続き本が読めるのも、また自宅ならではです。

2位 図書館

 読書のモチベーションが上がる場所といえば、図書館です。静かな環境で、本がずらりと並んだ光景はいやがうえにも読書欲を高めます。自分以外にも、読書に耽っている方が多くいらっしゃるのもポイントが高いですね。皆が本を読んでいる中では、読書は捗るというものです。
最近は内装が素敵な図書館が多くあり、いつかはそんな場所で読書をしてみたいというのが私の夢の一つです。

1位 電車

 私の第1位は電車です。不思議なことなのですが、自宅よりも図書館よりも、電車の中で読んだ方が捗るのです。私は兼業作家なので、電車での通勤時間があるのですが、その道中で行う読書は驚くほど捗ります。適度なざわめきと、心地良い揺れが集中力を高めるのでしょうか。理由ははっきりしませんが、私が最も読書にのめり込める環境です。
 普段より遠くまで電車で行く時は、たくさん本が読めると嬉しくなります。長い移動時間は苦ではありません。むしろ読書をしていると移動があっという間で、電車を乗り過ごしそうになることがたびたびあるぐらいです。集中しすぎてしまうので、私はいつも電車を降りる時間にスマホのアラームを設定しています。そうしないと、ほぼ間違いなく乗り過ごしてしまうからです。
 そして、また夢の話になりますが、私には電車での読書で夢があります。それは、環状線に乗ってひたすら読書をするということです。環状線なら終わりがないので、延々と読書ができます。そして、目的の駅を乗り過ごしても、もう一周すれば大丈夫なので心配が少なくて済みます。私は兵庫県住まいなのですが、山手線で無心になって読書をすることが大きな夢です。
 ただ環状線というものは、一周、二周、三周と乗り続けると、その分だけ運賃を高く払わなければならないシステムになっています(〇周しましたと自己申告するそうです)。私と同じ思いを抱いている方は、実行に移された際は運賃のお支払いにはご注意ください。


きど・そうた

1989年、兵庫県生まれ。神戸大学文学部卒業。第18回『このミステリーがすごい!』大賞でU-NEXT・カンテレ賞を受賞し、『そして、ユリコは一人になった』で2020年にデビュー。他の著書に「認知心理検察官の捜査ファイル」シリーズ、『図書館に火をつけたら』、『その塾講師、正体不明』がある。