私の○○ベスト3Vol.98 宇山佳佑『僕が高校時代に言われたかったセリフと、その返答ベスト3』
コラム
2026.09.15
第1位 「これ、手作りチョコなの。受け取ってくれる?」「い、いいですけど……」
第2位 「くそ。お前のドリブル、止めらんねぇよ」「先輩もなかなかやりますね」
第3位 「新入生代表、宇山佳佑!」「はい!」
僕はこれまで多くの恋愛小説を書いてきました。切ない恋もありました。甘い恋もありました。煌めくような青春も……。では、実際の作者はどうなのでしょう?
それはそれは、泣きたくなるほど悲惨なものでした。というわけで今回は、悲しい高校生活を送ってきた僕が、あの頃に言われたかったセリフと、その返答についてご紹介したいと思います。
第3位 「新入生代表、宇山佳佑!」「はい!」
僕の中で新入生代表といえば、『入試で一位を取った秀才』というイメージがあります。司会の先生の声と共に、「はい!」と僕は立ち上がります。新品の学ランの裾を誇らしげに揺らしながら、背筋を伸ばして颯爽と壇上へ。そんな僕を見つめる幼なじみの幸子。中学からの腐れ縁の雄一。面白くなさそうに睨んでくるちょっと不良の光太郎(彼とはこの後、殴り合いの末に親友になります)。そんな希望に溢れる高校生活のスタートに憧れていました。
ちなみに、実際の僕はというと、誰もいない昼休みの図書室で、一人フランツ・カフカの『変身』を読んで時間を潰していた日陰者です。勉強もロクにできませんでした。
第2位 「くそ。お前のドリブル、止めらんねぇよ」「先輩もなかなかやりますね」
生意気なルーキーである僕にヤキを入れてやろうと、バスケ部のエース・早野先輩が1on1を挑んできました。最初こそ敵意剥き出しだった先輩も、僕の気迫溢れるプレーにだんだんと魅了されていくわけです。抜きつ抜かれつの攻防戦。最後はキャプテンの「お前らなにしてる!」の声で、僕のダンクは外れるわけです。そのあと先輩に言われるセリフと返答。僕の言葉を聞いた早野先輩は、ナイキのリストバンドで額の汗を拭いながら「やれやれ。生意気な一年だぜ」と言ったとか言わないとか。
ちなみに、実際の僕はというと、ゴリゴリの帰宅部です。家に帰ってドラマの再放送を観るだけの毎日でした。
第1位 「これ、手作りチョコなの。受け取ってくれる?」「い、いいですけど……」
バレンタインデーの朝七時。僕の家の前に、学園のマドンナ・彩花先輩が手に息を吐きかけながら立っているではありませんか。寒さのせいか、先輩の頬はほのかに紅いです。どうして先輩がここに? 言わずもがな、僕を待っていたのです。そこでのセリフと返答。このあと、美味そうにチョコを食べる僕を見て、幼なじみの幸子が嫉妬の炎に焼かれたことは言うまでもありませんね。
ちなみに、実際の僕はというと、バレンタインデーの思い出はひとつです。友人と廊下を歩いていたら、彼が女子からチョコを手渡されました。そんな友人に向かって「いやぁ、モテますなぁ」と無理して笑いかけたこと。それだけです。
こうして思い返してみると、今の僕があるのは、あの歪んだ青春時代のおかげかもしれません。
宇山 佳佑(うやま・けいすけ)
神奈川県出身。ドラマ『スイッチガール!!』『君が心をくれたから』、ドラマ・映画『信長協奏曲』などの脚本を執筆。小説『この恋は世界でいちばん美しい雨』が、2019年啓文堂書店文芸書大賞を受賞。他の著書に『ガールズ・ステップ』『桜のような僕の恋人』『今夜、ロマンス劇場で』『君にささやかな奇蹟を』『恋に焦がれたブルー』『ひまわりは恋の形』『いつか君が運命の人(Ⅰ)(Ⅱ)』『風読みの彼女』などがある。9月7日に『ママはもういないんだ』(朝日新聞出版)が発売。