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私の○○ベスト3
Vol.96 君嶋彼方 私の「夏のホラー映画」ベスト3

 恐怖体験くらいでは納涼にはならないくらいの最近の酷暑にはうんざりするが、やはり「ホラー」という単語には「夏といえば」という枕詞はつきものである。
 小説家としては「ホラー小説」を挙げるべきなのかもしれないが、小説よりも映画ばかり観ている不良小説家なので、今回はホラー映画を挙げていきたいと思う。
 ここで「映画におけるホラーとは」という定義があるが、幽霊が出るもの、ヒトコワ系、スプラッタ系、全てひっくるめて「ホラー」と定義することにする。また、「おすすめホラー映画」などで検索して頻出するようなものは除外してみた。

■第三位『インシディアス 第2章』
 インシディアスシリーズ*は有名なのでご存知の方も多いかもしれない。シリーズ作品はたくさんあるが、一番のオススメは第二作にあたる『第2章』。というより、第一作はまるごとプロローグだと思っている。第一作の強烈なラストからの『第2章』の流れが見事で、怒涛の伏線回収に唸らされる。「これ、本当に後付けで考えた続編なの?」と思ってしまうほど。

*インシディアスシリーズは、公開順と時系列が一致しておらず、次のようになっている。
インシディアス(2010年公開)- 時系列③
インシディアス 第2章(2013年公開)- 時系列④
インシディアス 序章(2015年公開)- 時系列①
インシディアス 最後の鍵(2018年公開)- 時系列②
インシディアス 赤い扉(2023年公開)- 時系列⑤

■第二位『ゴーストランドの惨劇』
 四大フレンチホラーのひとつ、『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督の作品。あまり多くを語らない方がいい映画ではあるが、一番素晴らしい点は、普通の映画ならラストに持っていきそうな展開を、中盤に据えているところだ。しかもその展開を主人公の少女の成長譚にも絡めているのが巧みだ。イヤ~な空気感が常に漂っていて、湿度高めなホラーが好きな方にはオススメ。グロ度は低いが、少女たちがかなり痛めつけられるので苦手な人は注意。

■第一位『回路』
 黒沢清の幽霊描写が大好きだ。ジャンプスケア(突然の大きな音や映像で驚かせること)に頼らず、じっとりとした粘度の高い描写で、心の中をざわつかせてくる。一番怖かったのが、ある登場人物に向かって歩いてくる幽霊の描写。「ゆっくり歩く」や「少し浮いている」などではなく、明らかに常軌を逸した人間ならざる者の歩き方、というのを体現しており、本当に恐怖を感じた。ストーリー自体は少々難解だが、出てくる幽霊たちは未だに脳裏にこびりついている。

 以上、ホラー映画ベスト3である。不思議なものでそのときの気分によってランキングなど容易に変動するので、不動の三つとは言えないが、それでもオススメの作品であることは変わらない。文字数の関係であらすじまで明記できなかったが、気になった方はちょっと調べてもらえると嬉しい。蒸し暑い熱帯夜、少しでも体を冷やしたい気分のときにでも、ぜひ。


君嶋彼方(きみじま・かなた)
1989年生まれ。東京都出身。「水平線は回転する」で2021年、第12回小説 野性時代 新人賞を受賞。同作を改題した『君の顔では泣けない』でデビュー。他の著書に『夜がうたた寝してる間に』『一番の恋人』『春のほとりで』『だから夜は明るい』『枯れ枝に桜』などがある。