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私の○○ベスト3
Vol.97 三日市 零 私の会社員生活やらかしエピソード 暫定ベスト3

第3位「脈絡なく営業車をぶつける」(6年目)

第2位「善意で売上金xxx万円を回収不能にする」(2年目)

第1位「泥酔して寝坊した結果、家に上司が突撃してくる」(7年目)


 エッセイの仕事は嬉しい反面、怖くもある。ちょっとした出来事を面白い読み物に仕上げるには、純度100パーセントの妄想を垂れ流す小説とは違ったスキルが必要になるからだ。
 大体 「作家は変わり者が多いし、斬新な切り口の一つぐらいあるだろう」という期待がそもそも間違っている。本人に特に面白い経歴もなければ、今なお進行形で会社員ライフを送る、極めて一般寄り且つ社畜適性高めな個体も存在するのだ。私のように。
 というワケで、今回は15年超のリーマン経験のやらかしをネタに暫定ベスト(むしろワースト)を組んでみようと思う。

第3位「脈絡なく営業車をぶつける」(6年目)
 地方に転勤になり、車の運転が必須になった。それまで電車通勤だったシティガールは、毎日半泣きになりながら営業先に向かったものである。
 ある日、考え事をしながら出発準備を済ませた私は、何を思ったか普段より早め、アクセルと同時に思いきり左にハンドルを切った。甲高い音と衝撃で気付いた時には既に立体駐車場の柱が凹み、車の側面には派手な擦り傷が刻まれていた。
 緊急事態でもなく、出がけにぼーっとしていて車をぶつけるなど、よっぽど「こいつヤべぇぞ」案件だったのだろう。その後、僅か1年で営業は卒業することになった。

第2位「善意で売上金xxx万円を回収不能にする」(2年目)
 おかげで年始早々、成績マイナストップに躍り出ることになった。
 直接的な原因は書類に余計な文言を追加したせいなのだが、本人としては後工程の業務を効率化するつもりだった。今なら「一見すると非効率的なやり方にも何か理由がある」と予測もできるが、経験値の少ない新人にそんな感覚があるはずもない。
 入金不可の旨を知らされた時は本気で足元が崩れていく感じがしたし、上司を巻き込んで謝罪に追われた日々は思い出すだけでも胃痛ものだ。現在の私が社歴の割に気が利かないのも、この時に勝手な真似をしたトラウマが原因なのではないかと思う。(決して根が怠惰なワケではなく)

第1位「泥酔して寝坊した結果、家に上司が突撃してくる」(7年目)
 心配して駆けつけた上司がドアを叩いている音でようやく目が覚めた。2時間ドラマであれば確実に中で誰かが死んでいる状況だが、バッチリご存命である。
 飛び起きて玄関から出ると、廊下で上司と先輩が待ち構えていた。メイクも服も前日のままで狼狽える私を見て二人は全てを察したのか、心配そうな表情は一瞬で消え失せた。人間から「スン」と効果音が出るのを、その時初めて聞いた気がする。
 結局、その日は有給を貰い、翌日に改めて厳重注意を受けることになった。こんなアホでも即日クビにはならないので、日本の労働関係の法律には感謝したい。

 こうして並べてみると、社畜適性すら大して高くない気がしてきた。むしろ下には下がいると、多くの人に勇気を与えられたのではないだろうか。
 そんなワケで全国の会社員の皆さん、明日からも頑張りましょう。私もこれ以上暫定ベストを更新しないよう頑張ります。


三日市零(みっかいち・れい)

1987年生まれ。福岡県出身、埼玉県在住。慶應義塾大学卒業。2023年、『復讐は合法的に』で第21回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉としてデビュー。2025年、『魔女の館の殺人』で第9回ほんタメ文学賞たくみ部門大賞受賞。他の著書に、『復讐は芸術的に』『復讐は感傷的に』『鬼葛島の殺人』などがある。