J_novel+ 実業之日本社の文芸webマガジン

私の○○ベスト3
Vol.30 高橋弘希  カップヌードルベスト3

第一位 チリトマト
第二位 シーフード
第三位 マッサマンカレー



 しょうゆ、カレー、シーフードと、さしたる種類のないカップヌードルでベスト3をやるとは、この作家、とうとう頭がおかしくなったか、と思う読者はいるだろうか――、それは素人考えである。
 カップヌードルの種類はゆうに二十を超え、トムヤムクン、フカヒレスープ、シンガポール風ラクサといったものまである。ではなぜ、おまえがカップヌードルのランキングをやるのか――、それは私が今、カップ麺のできあがりを待つ、三分間の只中にあるからだ。
 よって本稿は、三分で仕上げなければならない。さもないと、私がこれから食す、カップ麺がのびてしまうのだ。このカップ麺が果たして何なのか、それは本稿のクライマックスで記そう。



●第三位、マッサマンカレー。

 CNNが「世界のおいしい料理ランキングベスト50」で一位にしたのがマッサマンカレーであるが、そのマッサマンカレーを日清がカップヌードルに持ち込んだ野心的な一品である。九種のスパイスとココナツミルクによる、辛さと甘さとが調和されたコク深い味わいを堪能できる。惜しむべきは、流通量が少なく、近所のコンビニで売っていないことだ。仕方なく私はAmazonで取り寄せているが、品薄ゆえに、ときに十個入りで六千円というプレミア価格になる。しかし今や大人買いである。こうして私のA賞の賞金は着々と減っていくのであった。


●第二位、シーフード。

 二位にシーフードを持ってくるとは気は確かか、と憤る読者も多いだろう。後述するが、私も十七歳まではシーフードが一位であった。バターを浮かべて食すと、味がマイルドになり、なんとも美味である。ちなみに私は健康診断でコレステロール値が高いと医者から忠告されており、カップ麺にバターは早死に待ったなしだが、気にしてはいけない。


●第一位、チリトマト。

 十七歳の頃、私は童貞であったが、それはさておき、この頃、私はファミマでバイトをしており、或る日、自ら揚げた揚げたてのファミチキを、自ら食す場面を店長に目撃されてクビになったが、それもさておき、この店舗で販売していたカップヌードルで、最も売れていたのがチリトマトであった。カップヌードルにチリトマトとかネタやろ、と軽く見ていたが、あまりに売れるので、興味本位で食してみて驚愕した。これはヌードル革命である。イタリアンとジャパニーズヌードルのフュージョン(融合)・アンド・エボリューション(進化)、当時の私はこの新感覚ヌードルの虜となり、それは現在に至っても変わらない。
 ――ピポポポポポポ。
 突如、本稿に鳴り響くこの電子音は何か、それは眼前の卓上にて、三分を知らせるタイマーの音である。よって本稿も終焉を迎える。して、私がこれから食すカップ麺は果たして何なのか、それはなんと、ペヤングのソースやきそばなのである。本稿はウェブに公開されるというが、炎上しないことを祈るばかりである。




たかはし・ひろき
「指の骨」で新潮新人賞を受賞しデビュー。『日曜日の人々』で野間文芸新人賞、「送り火」で芥川賞を受賞。近著にエッセイ集『高橋弘希の徒然日記』がある。