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私の○○ベスト3
Vol.52 芦花公園 「芦花公園」というペンネームにして面白かった反応ベスト3


1位 「芦花公園に住んでいるのですか?」
2位 「朝宮運河、朱雀門出、芦花公園、地名っぽいペンネームシリーズ」
3位 「お前が芦花公園を名乗るな。芦花公園を通るたび不快になる」



私の本を手に取ってくださった人がまず気になるのは本のジャンルやクオリティよりも「芦花公園」というペンネームだと思う。
 都内在住の人以外はあまり知らないだろうが、芦花公園というのは実際にある都立公園で、正式名称は「蘆花恒春園」である。名前の由来は文豪・徳冨蘆花だ。徳冨蘆花が逝去するまでの二十年間過ごした土地と家屋「恒春園」を、彼の没後、夫人が当時の東京市に寄贈し、その後整備されて現在の公園になった。徳冨蘆花の聖地であり、四季折々の花も楽しめる素敵な公園だ。
ちなみに、「芦花公園」というのは京王電鉄の駅名にもなっている。駅周辺には美味しいラーメン屋が二軒あるので行ってみるとよいでしょう。
 芦花公園(地名)の説明はここまでにして、本題に移ろうと思う。


第三位「お前が芦花公園を名乗るな。芦花公園を通るたび不快になる」

 最高じゃん。
 芦花公園(京王電鉄)には申し訳ないが、そんなことを言ってくる人間が通るたび不愉快になるのなら、芦花公園(私)は嬉しい。一生この名前でいたい。


第二位「朝宮運河、朱雀門出、芦花公園、地名っぽいペンネームシリーズ」

 最高じゃん。
 朝宮運河(敬称略)とは、ホラー・幻想小説界では最も有名なライターの男性で、私も一度インタビューをしていただいたことがある。ご本人も幻想小説に出てくるような細身の綺麗な男性で、古今東西のホラーコンテンツに造詣が深い。記事や書評は大変興味深く、素晴らしいものだ。
 朱雀門出(敬称略)は「今昔奇怪録」で第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞してデビューしたホラー小説家で、近年は怪談の分野でも活躍されている。
 直接的な残酷描写無しに底知れない不気味な恐怖を演出する手腕は見事というほかなく、私が最も影響を受け、尊敬している作家のひとりだ。
 そのようなお二人と並べられることは「地名っぽい」という理由であったとしても大変光栄で嬉しさしかない。ありがとう。ちなみに私だけは「ぽい」ではなく地名だ。


第一位「芦花公園に住んでいるのですか?」

 あなたは自分が住んでいる土地の名前をペンネームにするのですか?
 まあそういう方もいるでしょう。子母澤寛とか。
 私がそういう人間かどうかはあまり言うつもりがない。
 
 こういうペンネームにすると初対面の方から必ず「ペンネームの由来は?」と聞かれる。聞かれて答えるほどの理由がなく、そんな浅はかな自分が恥ずかしいので黙っているのだが、ネットで活動していた時からこの名前だった。デビューが決まった当初、私は一般的な人名らしいものに変えようとしていたのだが、担当編集者の方に「このままの方が個性的でいいですよ」と言われ、今に至る。
「芦花公園」という名前が多少なりとも関心を惹くきっかけになっているとしたら喜ばしいことである。
 なお、京王電鉄から抗議があれば変更いたします。





ろかこうえん
東京都生まれ。2020年、カクヨムにて発表した中編「ほねがらみ—某所怪談レポート—」がTwitterで話題をさらい、書籍化決定。21年、同作を改題した『ほねがらみ』でデビュー。他の著作に『異端の祝祭』がある。