J_novel+ 実業之日本社の文芸webマガジン

私の○○ベスト3
Vol.74 高遠ちとせ わたしの煮込み料理ベスト3


1位 牛スジ煮込み

2位 モツ煮込み

3位 豚汁



暑い盛りを過ぎ、朝晩ひんやりし始める頃、我が家に煮込み料理のシーズンが到来する。直径30センチ高さ20センチの大鍋で作る煮込み料理は、我が家の冬の定番メニューである。その中でも安定のベスト3をご紹介したい。


第3位 豚汁
はい。のっけから審判にアウトと笛を吹かれそうなメニューである。果たして豚汁は煮込み料理か否か? 悩ましい問題ではあるが、ひとまず煮込み料理と仮定して頂きたい。白菜、大根、人参、ゴボウ、ネギなどをざくざくと切り、豚こま肉を散らす。コンニャクと豆腐は忘れちゃいけない。それらを鍋にぶちこみ、具材が煮えたら味噌で味をつける。具沢山の味噌汁(あ、味噌汁って言っちゃった)は、もう立派なメイン料理である。


第2位 モツ煮込み
ぜひ豚の生ホルモンを使いたい。下茹でしてアクや脂を抜き、適当な大きさに切り分ける。野菜は大根、人参、ゴボウ。気分で玉ネギを入れる。あとはコンニャクにゆで卵。味つけは味噌と醤油を半々に、酒と味醂少々。ニンニクとショウガも投入。具沢山かつ汁も多めなので、モツ煮込みが献立にあれば汁物を作る必要はない。七味と長ネギをのせて召し上がれ。


第1位 牛スジ煮込み
ここ数年で一気にスターダムにのし上がったメニューである。我が家の近くでは牛スジがなかなか売っていないので、見かけたらまとめ買いをしておく。下茹でして使う分ずつ冷凍しておくと、すぐ使えて便利。具材は大根、人参、ゴボウ、コンニャク、ゆで卵。味噌と醤油、酒に味醂、砂糖で味を整える。食べるときにネギと七味をお好みで。もうおわかりだろうが、モツ煮込みと手間も材料も味つけもたいして変わらない。


我が家は二人家族のため、大鍋たっぷりの煮込み料理はしばらくのあいだ食卓にのぼり続けることになる。(ちなみに、鍋は粗熱を取ったあと冷蔵庫で保管しておく。中身にもしものことがあった場合、受けるであろう精神的ダメージは計り知れないからだ)煮込み料理は二日目が美味しいというのは定説である。三日目も美味しい。大根や卵は味がしみしみだし、モツも牛スジもトロトロである。だが、豚汁のヒラヒラのお肉はパサついてくる頃合いである。四日目、大根が溶け始める。飽きてくる。五日目、具材が溶けて全体的にどろっとしてきたものをやっとのことで平らげる。そうして1~2日のインターバルをおいて、また次の煮込み料理のターンが始まるのである。
ここまで書いて気がついた。これは煮込み料理ではなく、手抜き料理のベスト3だ。




高遠ちとせ(たかとお・ちとせ)
1973年、宮城県仙台市生まれ。『波とあそべば』が第12回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞。改題の上、『遠い町できみは』(ポプラ社)で2024年に作家デビュー。宮城県在住。