私の○○ベスト3
Vol.83 鯨井あめ 私の「ちょっとへこんだときに聴く曲」ベスト3
1位 米津玄師「こころにくだもの」
2位 warbear「気球だよ」
3位 ヨルシカ「ブレーメン」
生きていると、へこむことがある。生きているのだから仕方がない。大きなへこみは感傷に浸ればいいし、泣いたり怒ったりすればいい。けれど、ちょっとのへこみを大袈裟にしたくない。車に乗っていて道路の穴ぼこを通過したときの、「おっ」くらいで終わりたい。「なんかガタついたね」くらいで。
そんなときは音楽の力を借りる。強く励ます曲ではなく、そっと寄り添ってくれるような、「そういうこともあるよね」みたいな曲の力を。
3位 ヨルシカ「ブレーメン」
良い曲である。
イントロなしに「ねぇ考えなくてもいいよ」から始まる曲は、それだけで嬉しい。曲の雰囲気やBPMも程よくて、沈みかけた気持ちが戻ってくる。サビの「あっはっはっは」に合わせてコーラスすると、肩の力が抜ける。「同じような歌詞」だから「三番は飛ばして」よかったり、「数年経てばきっと一人も覚えてな」かったり、気楽さを思い出させてくれる。
世の中って案外くだらないし、人間は割としょうもない。私は誰のために生きているわけでもないんだった。今日はちょっと失敗したけど、小さな日々をそれとなくやっていこう。私自身のために。そう思わせてくれる明るい曲だ。
2位 warbear「気球だよ」
可愛らしい曲である。
私は愛の歌が好きだ。ささやかでシャイで穏やかな、閉じた愛の歌が。
ずっと幸せが続くことってなくて、誰かと過ごしていると、急に意見が食い違ってぶつかったり、嫌なところに気づいてしまって見て見ぬふりしたり、「これでよかったのかな」と不安になったりする。一緒に乗る気球を一緒に飛ばし続けるには、燃料が必要だ。高く高く昇っていくと、その高度に目が眩むこともあるだろう。足が竦むことだってある。燃やし続けていいのかな、昇り続けていいのかな。でもそうしようよ。ふたりでこのまま行こうよ。いまを信じてそっと手を握ってくれる、微笑ましさのある曲だ。
MVも非常に可愛らしいので、いつもYouTubeで聴いています。
1位 米津玄師「こころにくだもの」
優しい曲である。
この曲は、へこみを翌日に持ち越したくないときに聴く。サビで一緒にくだものを口ずさむと、へこみがなくなっていく。元の平面に戻るんじゃなくて、へこみを別の素材で埋めていく感じ。見た目は平面なので、上を車で通過しても「おっ」とはならない。でも車から下りて見ると、埋めた部分だけ色が異なるから、へこみがあったことはわかる。その色の違いが妙に愛おしくて、そうしてできたモザイク模様や、いまだ残り続ける凹凸もなぜだか愛おしくなってきて、まあ及第点でいいか、なんなら及第点のボーダー下げるか、なんて思わせてくれる。掌に収まる宝物みたいな曲だ。
音楽ってすごい。耳から入ってくる形のないものなのに、確かにそこにある。音と言葉の連なりと重なりが、心を動かす。何より、聴こうとしなくても勝手に聞こえてくるのだからすごい。こればかりは、「読む」という能動的な行動を読者に要求する小説にはできない芸当だ。素敵な音楽を届けてくださっている方々、本当にありがとうございます。
皆さんもよかったら聴いてみてね。
くじらい・あめ
1998年生まれ。兵庫県出身。2015年より小説サイトに短編・長編の投稿をはじめ、2017年に「文学フリマ短編小説賞」優秀賞を受賞。2020年に第14回小説現代長編新人賞受賞作『晴れ、時々くらげを呼ぶ』(講談社)でデビュー。他の単著に『アイアムマイヒーロー!』『きらめきを落としても』『沙を噛め、肺魚』(以上、講談社)、『白紙を歩く』(幻冬舎)、『消えゆく街の秘密の友だち』(PHP研究所)がある。