毎週火曜日更新! 実業之日本社の文芸Webマガジン

私の○○ベスト3
Vol.84 斉藤時々 私の「(妄想上の)映画館におけるフード売れ筋」ベスト3

第1位「チョコ入りのプチシュー」

第2位「鮭とば」

第3位「マシマロ」


 年間大体70回くらい映画館に行っている。どうせなら100回くらい行きたいなと思うのだけれど、年末にチケットの半券を数えると毎年60枚ちょっとになっている。時々失くすし、チケットの発券自体をせずにスマホの画面を見せて入場するタイプの劇場もあるので、多分70回くらい行ったんだろうと思っている。
 映画が好きだし、映画館も好きなので、大学時代は4年間ずっとシネコンでアルバイトをしていた。
 だからこの先、買った覚えのない宝くじにうっかり当たったり、会ったこともない親戚から莫大な遺産が転がり込んでくるとして、私は私の好み丸出しの映画館を建て、経営者兼支配人として辣腕を振るうことになるだろうと日々妄想を逞しくしている。
 私の映画館では座り心地の良い一人掛けの椅子が交互に配置され、前の人の後頭部を見つめる義務から解放される。上映中に喋ると微弱な電流が流れるので注意されたし。謎の電波が飛び交っている影響でスマホは強制的に電源オフになるので安心だ。最新の作品だけでなく、古い映画もしょっちゅうかかっている。チケット代は大人1000円、子ども500円。
 フード&ドリンクも充実している。中でも特筆すべきはフードで、支配人がこだわり抜いたメニューは他と一線を画す。ポップコーンなどもってのほかである。過激派との誹りを甘んじて受け入れる覚悟で打ち明けるが、ポップコーンを食べる音はすげえうるさいと昔から思っている。容器に手を突っ込んでガソゴソかき混ぜる音がもううるさいし、口に放り込んだ後に咀嚼する音もうるさい。何より問題は長さである。長時間食べ続けられるせいで、音が発生する時間も長いのだ。下手すると2時間ずっと耳につく。あれが気にならない映画といえばマッドマックスくらい絶えず爆音が鳴り響いている作品に限られる。だからマッドマックスの上映日だけはポップコーンを解禁とする。
 そんなわけで、前置きが長くなってしまったけれど、私の(妄想上の)映画館におけるフード売れ筋ベスト3を紹介したい。
 3位は当然マシマロ。私は小学生の頃からずっと「映画館ではマシマロを売るべき」と主張し続けてきた。音を立ててマシマロを食べるのは相当難しい。手も汚れない。甘くて美味しい。完璧である。たくさん食べると気持ち悪くなる恐れがあるので、10個くらいを不織布の袋に入れて販売している。
 2位は鮭とば。甘いものよりしょっぱいものを好む人に人気がある。口に入れておけば長時間ずっと味がするので、何かを食べ続けながら映画を見たい人にぴったりである。喉が渇くのでドリンクは必須だ。
 1位はチョコ入りのプチシュー。1個まるごと口に放り込んでしまえば無音でいける。手を汚さずにチョコが食べられてハッピー。コーヒーや紅茶との相性も抜群だし、うっかり落としてしまっても服も床も汚れない。これこそが最適解だ。なんでどの映画館もプチシューを売らないんだろう。不思議である。
 というわけで、こんな映画館でよかったら、ご来場をお待ちしております。


さいとう・じじ

山口県生まれ、福岡県在住。2025年、「笑顔は業務に含みません」で第24回「女による女のためのR-18文学賞」大賞と友近賞をダブル受賞。