私の○○ベスト3
Vol.90 実石沙枝子 使い勝手のいい静岡弁ベスト3
第1位 ~ら?
第2位 こずんでる
第3位 せいせいしない
生まれも育ちも静岡県だが、地元の同世代の人たちがほとんど静岡弁を使わないので、とてもさびしい。わたしは祖父母にたいそう可愛がられてきたこともあり、今年ようやく30歳という年齢でありながら、80代レベルの静岡弁ユーザーである。このままでは静岡弁話者が減ってしまうのではと危惧している。しっかりしてくれ、静岡県民&出身者。
しかし、静岡の人が静岡弁を使わないなら、静岡弁を輸出すればいいじゃない!
というわけで、独断で選ぶ使い勝手のいい静岡弁を紹介する。
第3位 せいせいしない
この言葉が静岡弁であると気付いたのは、わりと最近だ。小説内に「せいせいしない天気」などという感じで使用し、編集者さんからご指摘いただいた。
「せいせいしない」とは、「なんかすっきりしない」という状態を表現している。梅雨時の低くて暗い曇り空、煮え切らない態度の人。これらを示す。
標準語に「せいせいする」という言葉があるので、当然「せいせいしない」もあるに決まっていると思い込んでいたが、こちらは静岡弁であるらしい。逆に言うと、似た言葉があるからこそ、さりげなく静岡弁を使うにはぴったりだ。みなさん、ぜひ使っていただきたい。
第2位 こずんでる
これをお読みのあなたは、カルピスを飲んだことはあるだろうか。ペットボトルで売っているカルピスウォーターではなく、かつてお中元などでやり取りされた原液のほうだ。あの濃厚な原液と冷たい水をグラスに注ぐ。しかし、それを混ぜるのを怠ると、グラスの底の方ばかりカルピス味が濃くなる。
これです! このカルピス味が底に寄ってる状態。これが「こずんでる」!!
標準語だと「沈澱してる」あたりになる言葉だが、日常会話で「カルピスの原液が沈澱してるね」と言わない気がする。だってさ、理科の実験じゃないんだから。というわけで、「こずんでる」もぜひ使っていただきたい。
堂々の第1位 ~ら?
わたしは静岡県の東部から中部にかけての方言を使うので、西の方でも使うのかはわからないが、「~ら?」を推していきたい。わたしの最推し静岡弁である。そしていちばん無意識のうちに使っている。
これは、カジュアルに同意を求めるフレーズだ。標準語および関東弁の「〜でしょ?」とか「〜だよね?」とかに相当する。関西弁なら、おそらく「〜やん?」とか「〜やろ?」だ。
では、なぜ「~ら?」が第1位なのか。
1音で済むからだ。
最小のコストで相手に同意を求められる、このシンプルさ。コミュニケーションの円滑化に役立つかもしれない。
あと、標準語を喋っているつもりで県外の人に「〜ら?」と言ってしまい、ときどききょとんとされるので、このフレーズの知名度を上げたいのだ。そしてあわよくば、みなさんにも使っていただきたい。
以上が、わたしが独断で選ぶ使い勝手のいい静岡弁ベスト3。みなさん、覚えてくださっただろうか。これを機に、今日から静岡弁を使ってくれるら?
実石沙枝子(じついし・さえこ)
1996年生まれ、静岡県出身。2021年、「踊れ、かっぽれ」で第11回ポプラ社小説新人賞奨励賞を受賞。翌2022年、「リメンバー・マイ・エモーション」(のちに『きみが忘れた世界のおわり』に改題)で第16回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞しデビュー。著書に『物語を継ぐ者は』『17歳のサリーダ』『扇谷家の不思議な家じまい』『マッドのイカれた青春』。2026年3月、最新作『はるを呼ぶ』(ポプラ社)を刊行。
