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原田マハ×田中圭×中谷美紀 映画「総理の夫」東京・パリ2都市生中継舞台挨拶 全文レポート!

原田マハ×田中圭×中谷美紀 映画「総理の夫」東京・パリ2都市生中継舞台挨拶 全文レポート!

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大ヒット上映中の映画「総理の夫」の舞台挨拶が、10月4日に丸の内TOEIにて開催され、原作者の原田マハさん、ダブル主演の田中圭さんと中谷美紀さんのトークが実現しました! 原田さんはパリの書斎からリモートでの出演です。3日前に緊急事態宣言が解除となり、満員のお客様を迎え熱気あふれる会場で交わされた、トークのほぼ全文をお届けします。
まとめ/編集部

試写を見て、後半ずっと泣きっぱなしでした(田中)

田中:相馬日和役の田中圭です。9月23日の初日舞台挨拶のときは席数がまだ50%に制限されていました。久しぶりに100%の客席を見ると、スゴイですね。「ああ、いっぱい!嬉しい!」となりますね!

中谷:ほんとうに感慨深いです。こうして緊急事態宣言明け早々に、劇場に足を運んでくださってありがとうございます。公開できるかどうか、ずっと心配していたものですからなおのこと、こうして満場のお客様とお目にかかれるのは幸せです。ありがとうございます。

――9月23日に公開されまして、今日は公開12日目、たくさんの方にご覧いただいています。「笑って楽しい気持ちになれた」「夫婦の物語に感動」といった声も広がっています。おふたりのところには反響は届いていますか?

田中:僕は試写会で、後半ずっと泣きっぱなしだったんです。この感覚は自分だけなのかな?と気になっていたので、僕としては珍しく、「この映画観てくれ」と友達みんなに伝えました。実際に観た友人たちからも「わかったよ、良かったよ」という反響をもらったので、良かったです。

――中谷さんの方には反響届いていますか?

中谷:田中圭さんが演じられた日和くんは、働く女性にも働いていらっしゃらない女性にとっても、理想の夫だと思いますし、実際、そのようなお声をたくさんいただきました。(会場に向かって)皆さんいかがでしたか?

(会場拍手)

田中:「素」が出ちゃいましたよね。僕の素が。

中谷:……エッ? いまちょっと聞こえないんですけど(笑)。

田中:ウソです(笑)。

中谷:田中さん、ご自宅では朝食は作られるんですか?(編集部注:映画のなかでは、日和が朝食を作る場面が登場する)

田中:僕、朝ごはん食べないんです。ほんとうは作れるんですけど……。ほんとうは……。

中谷:……(疑いのまなざし)。

田中:ウソです!(笑)

田中さんの優しさとおちゃめさ、思い描いていた通りでした(原田)

――さて、きょうは、もうおひとりスペシャルゲストをお呼びしています。物語の生みの親、映画「総理の夫」原作者の原田マハさんです。本日はフランス・パリの書斎からリモートでご出演くださいます。ご挨拶をお願いします。

原田:こんばんは!原田マハです。(リモート画面に手をかざして)えーと、ここから客席は見えないのですが(笑)、いまお話を伺って、緊急事態宣言があけて、客席に100%お客さんがいらっしゃっているとのことで、大変嬉しく思います。

――さっそく原田さんにお伺いしたいのですが、2013年に原作単行本が刊行、執筆されたのはさらにそれ以前ということで、今とは違う時代の空気だったかと思います。着想のきっかけを教えてください。

原田:執筆から10年近く経って、世の中の状況もだいぶ変わったと感じています。当時は今よりもさらに、女性の立場がなかなか注目されづらい状況だったと思います。そういった状況のなか、日本のリーダーには女性が少ないことに懸念を抱いていました。「もし日本のトップである総理大臣が女性だったらどうなるだろう?」と考えたとき、最初に『総理の夫』というタイトルが降りてきました。総理の夫の立場から日本初の女性総理大臣のお話を書いてみたらどうだろう、痛快な政治エンターテイメントにできたらいいな、というところから始まりました。『総理の夫』の前に、『本日は、お日柄もよく』というスピーチライターが主人公の作品を書き、少し選挙について勉強していたので、それを生かして書いてみたいというきっかけもありました。

――原作は、夫である日和の日記という形でつづられる物語になっていますね。なぜ日和を鳥類学者で、御曹司という設定したのでしょうか?

原田:「女性総理とそれを支える夫」という設定自体が、残念ながら完全なファンタジーだと感じられたので、どうせファンタジーを書くなら、思い切って浮世離れした設定にした方が面白くなるだろうと思いました。鳥類学者で御曹司。現実離れしていますが、心根は優しくて、社会をよりよくしようと頑張る妻の凛子を支える。のほほんとしているけれど、心の底から優しい男性として描きました。

――田中圭さん演じる、映画の日和はいかがでしたか?

原田:すごく素敵でしたね。田中さんの優しいところ、おちゃめなところ、「エッ、エッ、エッ!?」とアワアワしながら巻き込まれるところ――私が思い描いていた日和の姿に非常に近い感じがしました。田中さんもおっしゃっていた通り、映画を最後まで引っ張って、感動いたしました。田中さん、ありがとうございました。

田中:こちらこそありがとうございました。そうおっしゃっていただけて嬉しいです。僕の素が出たのかなと思っています(笑)。

中谷・田中:「エッ?」(笑)

呼吸をするように支え合いのバランスが変わっていく、理想のパートナー(田中)

――日和が妻を理解して心から応援している姿勢がとても素敵だった、という声が多いです。田中さんご自身が、日和に共感、尊敬するところはありますか?

田中:まぁ素のままやっているので……。

中谷:……ハイ?(笑)

田中:……すみませんでした(笑)。日和は、凛子さんを支えることへの抵抗心がまったくないですよね。当たり前のこととして妻を支えているけれど、そこにちゃんと「自分」も存在している。もちろんガマンしなきゃいけない時はあるけれど。自然にそうさせてくれる凛子さんもすごく素敵ですね。……どうしてもあるじゃないですか、「なんか俺の方がガマンしてる気がするな?」とか「お前だけ自由にやってない?」とか。呼吸をするように支え合いのバランスが変わっていく夫婦で、パートナーとしての理想のあり方だろうなと思いました。演じていて、とても幸せでした。

――原田さん、凛子というリーダーを描く上で、とくに意識されたことはありますか?

原田:自分の理想を描きました。とにかくかっこいい女性であってほしい。ひところ「ハンサムウーマン」という言葉がありましたが、ハンサムで、さっそうとして、凛として、どんなことにも屈しない。未来を見据えてみんなをひっぱっていくリーダーシップがある人。とはいえ、ひとりよがりではなく周囲やパートナーである日和を思いやり、自己満足で終わらせず、常に周囲に気を配ることができる。そういう女性がリーダーとして現れてくれたらどんなに素晴らしいだろうと思いながら書きました。執筆中、実は、頭のなかでは中谷さんを妄想していたんです。中谷さんに演じていただくと決まったときは、「エッ! 私の妄想がリアルになるの!?」と驚きましたし、とても嬉しく思いました。

――執筆中から中谷さんをイメージされていたんですね! 中谷さん、いかがですか?

中谷:大変おこがましいことで……宣伝用のリップサービスかなとずっと思っていたのですが……ほんとうですか? とてもありがたいことです。まぁ素が出ちゃったかなと(照)。

田中:出してましたね(笑)。

女性として生まれてきて良かった、と思えるまでに紆余曲折がありました(中谷)

――相馬内閣が発足して、首相官邸の階段を下りてくるシーン、小説のなかでは凛子の「まぶしさ」というふうに表現されていましたが、映画の中の凛子はそれを体現していましたよね。その先に国民を見据えているまぶしさを。

原田:あのシーンは、これからご覧になる方の目にも焼き付くのではないかと思います。まぶしすぎてクラっとするくらい。神々しくて、まさに女神そのもの。こんなシーンを未来に実現してほしいと想像せずにはいられないくらい、すごく素敵なシーンでした。

――本作をご覧になった感想で「中谷さんの“沼”にはまった」とか「ほんとうにかっこいい、恋をしてしまった」といった声が聞かれました。映画の中と同様に、リアル“凛子ジェンヌ”も出現していますが、受け止められていますか?

中谷:ありがとうございます。原田マハさんが描かれた凛子の姿が、一点の濁りもないすがすがしい女性でした。私利私欲ではなくこの国の未来を想っている。「女性だからいい」ということではなく、日和くんのセリフにもありましたけれど、凛子はたまたま女性だった。彼女が理想を実現するために必要としたポストが総理大臣だった。そのことがしっくりきて、その想いだけで演じていました。……大変ですよね、女性として生きていくのって。(会場に向かって)みなさんご苦労はありませんか? 私は結構苦労したんですけれど……今では女性に生まれて良かったと思いますが、そこに至るまでには色々悩んだり失敗したり、紆余曲折がありました。でも凛子に夢を託して、女性がより輝いて生きやすい社会になってくれたら。そしてひいては男性も子どもたちもお年を召した方々も、すべての方が幸せになってくれたらと思いながら演じておりました。


中谷さんが意外と“おとぼけさん”だったのは新発見でした(田中)

――ありがとうございます。今作は、河合勇人監督がコメディタッチな演出を取り入れながら、全世代が楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっています。原田さんから、田中さん、中谷さんにお聞きになりたいことはありますか?

原田:去年、(コロナ下で)一番大変だった頃に撮影されたと伺っています。その頃、私はパリにいて撮影現場に立ち会うことができませんでした。監督やスタッフとのコミュニケーションも含めて、色々気を遣うなかでの撮影だったと思います。撮影を通して新しい発見や体験はありましたか? ご自分の演技でも、作品についてでも。

――田中さん、いかがですか?

田中:発見ということでいうと、中谷さんが意外とおちゃめなところですね。

中谷:「意外と」って、どういうことですか?

田中:いやいや……事前のイメージでは、あの、ピシっとされている……気品のあるイメージがありますので。

中谷:バカにしてます?(笑)

田中:いやいや、してないですよ、もちろん(汗)。「なんて話しかけようかな」とか、撮影に入る前は不安があったんですけれど、意外と“おとぼけさん”だったりするので、すごくかわいらしいなと。ギャップは新発見でしたね。(しどろもどろ)

――(笑)原田さんが、画面のなかで笑っていらっしゃいます。中谷さんは、コロナ下での撮影で大変だったことはありますか?

中谷:田中さんは、ファンの方はご存じかと思いますが、とても空気が読める方で。コメディパートの間合いや表情、リアクションがとっても上手。でもこの作品はコメディだけではなくて、国民と、自分の子どもの命を天秤にかけるようなシーンがあったりもします。そんなときでも、その雰囲気を自然に作ってくださるので、私自身が努力をしなくても凛子の気持ちになれて、自然に涙があふれてきました。とってもラクだったんですよね。共演者に恵まれるというのはとても有難いことです。無理をしなくてもその役にさせていただけるというのは、いい原作があって、いい監督がいて、スタッフと共演者がいると、無理をしなくても、自然にその役にさせていただけるのだと、改めて学べました。

――田中さん、かみしめていらっしゃる表情ですね。

田中:ほんとうに、環境って大事だと思いました。冒頭で出てくる日和の家のロケ地は山梨だったんですけど、近くに美味しいほうとう屋さんがありました。お昼に食べに行っていたんですよ。

中谷:抜け駆けしたんですね? 自分だけ。

田中:みんながお弁当を食べている隙に行ったんですけど(笑)。美味しかったことを思い出しました。

中谷:(会場のお客さんへ)そういう人なんですよ(笑)。

――あくまで空気を読んで、ほうとうを食べにいったんですね?

田中:はい、そういうことです。空気は読まないと(笑)。

エンディングは原作と少し変わっていますが、テーマは通底しています(原田)

――さて原田さん。原作と映画では少しラストが違いますよね。読んでから観る方も、観てから読む方もいらっしゃると思いますが、原田さんはこの違いに関してはどうお感じになっていますか?

原田:おそらく、原作を先に読まれた方は、必ず映像を見たくなると思いますし、映画を観られた方は、おふたりをはじめ、キャストの皆さんの熱演に引き込まれて、きっと原作を読んでいただけると信じています。どちらが先でも大丈夫です。エンディングは確かに原作と少し変わっていますけれど、中心に据えてあるテーマはぶれていない。映画のキャッチフレーズとしても使われている、凛子が言い続ける「未来をあきらめない」という言葉に、すべてが集約されていると思います。凛子と日和が、自分たちも含めて「未来をあきらめない」という意思を貫いたことは原作にも映画にも通底しています。これから映画をご覧になる方は、どういう事件がおき、どんなエンディングを迎えるのか、楽しみにご覧いただければと思います。

――ありがとうございます。映画でも原作でも、ふたりの周りの人たちの動きにも泣かされました。
あっという間にお時間となりました。最後に、このあと映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

原田:満席になった会場を是非見てみたかったです。でもそれは中谷さんと田中さんにお任せして、私はパリから満場の会場を想像しながら、みなさんと一緒に私の心の中で映画を再生して、手元の原作を読もうと思っています。どうぞみなさん最後まで楽しんでいらしてください。

中谷:今はエンターテインメントのさまざまな可能性も多様性もあるとき。映画館に訪れなくても楽しめるなか、こうしてわざわざ足を運んでくださって、貴重なお時間をさいて劇場にいらしてくださったこと、ほんとうに感謝しております。私たちがまた映画を作り続けるための大切なご支援となります。これからも映画館で楽しんでいただけたら。そして原田マハさんの原作も楽しんでいただけたら嬉しいです。本日はありがとうございました。

田中:みなさん今日はありがとうございました。映画館は、日常のなかにあるけれど、その瞬間だけ非日常に連れて行ってくれる場所。どの作品を観るかによって、どの世界に2時間の旅ができるかが変わる。この「総理の夫」は、みんなにお勧めしやすい作品だと思っています。どこまでキャッチしていただけるか、どんな感想を持つかはご覧になった方の自由ですが、前向きな、スカっとした後味を、映画館から持って帰っていただける作品だと思います。僕自身もいま、それを体感したいと思っています。二回三回と観てくださっている方もここにはいると思いますが、ぜひ五回六回、七回八回とご覧いただければと。毎回違う人を誘ってくださってもいいと思いますし(笑)。面白かったと思ったら、ぜひ勧めてほしいと思います。日本人は平均すると一年に一回しか映画館に行かないと聞きました。ぜひ「映画っていいよ、『総理の夫』は面白いよ」とお勧めして連れて行ってあげてください。今日も楽しんで帰ってください。どうもありがとうございました!

映画「総理の夫」
公式サイト リンク先 https://first-gentleman.jp/
2021年9月23日(木・祝)全国ロードショー
配給:東映、日活
ⓒ2021「総理の夫」製作委員会

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