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12月の文庫新刊『ももいろ女教師 真夜中の抜き打ちレッスン』によせて
妄想力 葉月奏太

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明るくてエロくて、ほっこりした話にしよう。

今作を執筆するにあたり、早い段階で物語の雰囲気だけは決まりました。やさしいお話を書きたい、なぜかそんな気分だったのです。

読んでくださった方が、エロい気持ちになると同時に温かい気持ちにもなる。そんな一粒で二度美味しいストーリー、というのを念頭に置いてプロット作りに着手しました。

あんな人やこんな人を登場させよう、そうだ、どうせなら全員「いい人」にしよう、それに新しいことにも挑戦したい。いろいろな案が浮かびましたが、ひとつのストーリーにまとめるまでは時間がかかりました。新しいことへの挑戦が、思いのほか大変だったのです。

今作は全五話の短編連作となっています。この形式での執筆は初挑戦です。すべてのお話は独立していますが、時間軸を微妙に重ねることで繋がっており、ひとつの長編としても楽しめるように書きました。もちろん、官能小説であることは大前提。ストーリーがどんなに凝っていても、肝心のエロ要素が薄まってしまっては意味がありません。官能小説における短編連作の難しさを実感しました。それでも、とにかく挑戦あるのみです。挑戦の先にしか未来はない。作家の仕事は、常に失敗できない挑戦の繰り返しです。いろいろ調整に時間がかかりましたが、ようやく自分で納得できる形に落ち着きました。

登場人物の設定で悩むのはいつものことです。

今作ではいつも以上に、実体験が役に立ちました。とはいっても、私がプライベートで人一倍エロい体験をしているわけではありません。むしろ悲しいくらい地味な青春時代でした。

中学高校の六年間を男子校の男子寮という、不健全かつ不自然な環境で過ごしたのです。そのことにより、純粋培養されたエロ妄想が、私のなかには根付いています。

学校と寮は隣合っており、しかも、周囲にあるのは茶畑とみかん畑のみ。女教師は一人もいない。美人とか、地味とか、若いとか、若くないとか、エロいとか、エロくないとか、そういう問題ではなく、最初から一人もいないのです。寮の規則で街に出ることは許されていないので、週末以外は同年代の女性を見かける可能性はゼロ。毎日、学校と寮を往復するだけ。そんな世間から隔絶された生活は、エロ妄想を確実に膨れあがらせていきました。具体的にどういうエロを妄想したかではなく、鬱屈としたパワーが育まれていったのです。

高校を卒業して二十数年経った今でも「共学がよかったな」と思います。しかし、あの無駄に思えた六年間がなければ、私が官能小説を書くこともなかったでしょう。

怒り、悲しみ、喜びなどの感情は、程度の差こそあれ、時間とともに薄れていきます。もちろん、いつまでも変わらない強い感情もありますが、人生経験を積んでいけば、気持ちを静める方法が見つかる。少なくとも私はそうでした。でも、六年の寮生活の間に溜めこんだエロへの渇望だけは、二十数年経っても薄れることはないし、薄めることもできない。おそらく、これからも一生、変わることはないでしょう。

共学で女子と机を並べたり、授業中に女教師をぼんやり眺めてみたり、休み時間に女子とおしゃべりをしたり……。共学に通っていた人たちは「そんなにいいもんじゃないよ」と言いますが、そう思えることが羨ましい。男子校出身の私は想像するしかないのですから。そんな気持ちが、官能小説を書く原動力になっています。

そして、今作『ももいろ女教師 真夜中の抜き打ちレッスン』には、私が出会えなかった素敵な女教師や養護教諭が登場します。「こんな先生、いるわけねえよ」と言わずに、大人のファンタジーを楽しんでいただけたら幸いです。

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