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2月の新刊『処女刑事 歌舞伎町淫脈』によせて
私の仕事は嘘をつくこと? 沢里裕二

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警察の中の男女関係ってどうなんだろう?

そんな興味から、この小説は書かれています。はい、興味本位に妄想を膨らませました。

実は、私は、子供の頃から嘘をつくのが好きでした。

どうにか道を外さずに、一般社会人として生きこられたのは、きっと人を貶(おとし)めるための嘘をつかなかったからでしょう。

最初に就職したのは広告代理店で、コピーライターという職種に配属されました。ある意味天職でした。嘘は書けませんが、どれだけハッタリを利かせるかが勝負の仕事でした。

その後、もっと大きな虚構の世界があると、友人に唆されて、レコード会社に入社し、音楽プロデューサーとなりました。アイドルの楽曲を制作する仕事です。

この仕事にも嵌(はま)りました。

「どうしたら大向うを唸らせることができるか?」

そればかりを考える日々です。

はったり、どんでん返し、引き技、背負い投げ。どんなことをしてでも、お客様を沸かせたい。夢と冒険のジェットコースターに乗せることがアイドルを育成するスタッフの使命なのです。三十年ほど、ずっとそんな仕事をやりつづけ、拍手をいただく恍惚に浸ってまいりました。

さらに私は考えました。

もっと大嘘をつける仕事は、ないのか? と。

そう考えれば、誰もがたどりつくのが、小説家です。

三年前、私は本気で小説家になることを考えました。

なかでも官能小説が面白くて、官能作家って、かっこいいと思ったのです。

人間、思い込めば願いは叶うもので、団鬼六賞に応募したところ、優秀作をいただきました。選考委員の方々が私の作品の荒唐無稽さを評価してくれたのが、私には幸いしました。おかげで、図に乗って、ありえないような話ばかり書くようになったのです。

デビュー作を読んだある先輩作家は「大法螺吹きとは、沢里裕二のためにある言葉だ」とまで言ってくれました。

そして、本作『処女刑事 歌舞伎町淫脈』も、荒唐無稽極まりない警察小説です。

日本中どこの署を探しても「性活安全課」なんてあるわけがない。

まぁ、だいたいの人は「くだらねぇ」「またバカがバカな話を書きやがった」と思われることでしょう。

しかし私はリアリティだけが小説だとは思わないのです。

現にテレビドラマで見る警察物の大半が嘘です。捜査会議の場でホワイトボードに容疑者の写真を張ることもなければ、ましてや崖の上で事件解明はありません。

実際のところ、警察関係者は、あんまりリアルな警察ドラマや小説ができても困るらしいのです。かなりリアルに見せかけた警察ドラマも、ほとんどが「劇」でしかないのです。

だったら、徹底的に、妄想だけで、警察小説を書いてみようと思いました。

「警察の中の男女関係ってこうなんじゃねぇ? かなりエロい捜査ってあるんじゃないか?」

すべてが、妄想から始まっています。

警察小説も最近は犯人捜しよりも、内部の人間関係に重きを置くものが増えているようです。

内部汚職事件や権力闘争は、他のジャンルの作家の方にお任せします。

官能作家として「エロい捜査」や「署内エッチ事情」を描いてみました。

まず「署内エッチがないわけがない」という前提に立っています。

中年刑事と若い婦警さんが、取り調べ室でやっちゃったりしてるという「気」がするのです。

あくまで「気がする」だけです。

そして、風俗担当になった女刑事さんが、業務として「挿入」しちゃうことは、どうだろう? 「絶対にありえませんっ」といいきれるだろうか?

私はゼロではないと踏んでいます。麻薬捜査官が麻薬に溺れることがあるように、エロ担の捜査員もエロいことをするだろうよ。

その可能性は、崖の上の事件解明より、はるかに確率が高いと考えます。

そして処女の女課長が、「性活安全課」に配属されて、巨悪と戦う中で、やられちゃう。

どうでしょう? バカバカし過ぎますか?

しかし、ひょっとしたら、公表されていないだけで、実は「性活安全課」はもう出来ているような気がします。

はい、私の妄想です。読んで「騙された」と怒られても、お代は返しませんっ。

だって、これだけ荒唐無稽な話だと、断っているんですから……。

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