私の○○ベスト3
Vol.71 白川尚史 私の「新しい考え方を授けてくれた自己啓発書」ベスト3
第1位『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』
第2位『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』
第3位 『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』
私のキャリアは起業から始まっており、指導者もおらず、全てを自ら学び取らねばならない中、本から数多くの糧を得ました。優れた本は事業や経済に留まらず、人の意識や行動の変革を促し、日々の生活の標になってくれます。そこで、10年を超える私の経営人生で、新しい考え方を授けてくれた3冊を紹介したいと思います。
第3位 『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』
本書で示される “アトミック・ハビット” は、小さな習慣がいかに大きな結果をもたらすかを教えてくれます。加えて、私が最も大切だと思うのは、人の行動はアイデンティティから生じる(逆もまた然り)という根本原理です。すなわち、自分が今の自分のまま、小手先で行動だけを変え続けるのは不可能ということです。
本書からは、“習慣や行動を変えたければ、変えるべきはセルフイメージである”という重要な教訓を学びました。
第2位『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』
本書は、行動経済学が日本で広く知られるきっかけとなったベストセラー本です。「プロスペクト理論」(人は利得よりも損失を過大に評価する傾向を持つという理論) をはじめとして、実生活でも応用の幅が広く、自らをメタ認知し「私の行動は合理的か? バイアスに影響されていないか?」と問うきっかけを与えてくれます。
ただし、注意して欲しい点もあります。2002年にカーネマン氏がノーベル経済学賞を受賞し、2010年代にかけて持て囃された行動経済学ですが、今では一部の論文にデータの捏造の疑いが持たれ、行動経済学自体が信用できないと考える人もいます。どれほどもっともらしく、皆が信じていたとしても、鵜呑みにせず、自らの責任で取捨選択し考えに取り入れていくことの重要性も、この本は教えてくれます。
第1位『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』
本書では、人の態度を3種に分類しています。相手から可能な限り多くを得る“Taker”。見返りを求めない“Giver”。そして、ギブとテイクを釣り合わせる “Matcher”。
普通に考えれば、ビジネスをはじめ人生で成功するのは Taker のように思えます。しかし研究によれば、最も成功するのは Giver なのです。同時に、最も失敗するのも Giver でした。本書では、成功と失敗を分ける要因や、具体的な行動戦略が語られています。私はこの本を読み、事業の成功のため Taker にならなくていいことにホッとしました。一人でも多くの Giver に本書が届けばいいなと思います。
白川尚史(しらかわ・なおふみ)
1989年、神奈川県横浜市生まれ。東京都渋谷区在住。弁理士。東京大学工学部卒業。在学中は松尾研究室に所属し、機械学習を学ぶ。2012年に株式会社AppReSearch(現在は株式会社PKSHA Technology)を設立し、代表取締役に就任。2020年に退任し、現マネックスグループ取締役兼執行役。「ミイラの仮面と欠けのある心臓」(単行本刊行に際し『ファラオの密室』と改題)で第22回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2024年デビュー。