J_novel+ 実業之日本社の文芸webマガジン

池井戸潤原作 ドラマ『花咲舞が黙ってない』特設サイト

池井戸潤原作 ドラマ『花咲舞が黙ってない』特設サイト

share

twitterでシェアする facebookでシェアする
取材・文=吉田大助(ライター) 写真提供=日本テレビ
Menu

★原作者・池井戸潤さんもエール! ドラマ『花咲舞が黙ってない』撮影現場レポート&クロストーク

池井戸潤の代表作の一つ『花咲舞が黙ってない』が、4月より連続ドラマ化され放送中だ(日テレ系、土曜21時〜)。
周知の通り、『花咲舞が黙ってない』はかつて杏と上川隆也のコンビで2014年と2015年にドラマ化されていた(原作は実業之日本社文庫・講談社文庫『不祥事』)。今回は、キャストを一新。過去2回のドラマ放送後に発表された新作小説(中公文庫・講談社文庫『花咲舞が黙ってない』)を原作に、ドラマオリジナルの展開もふんだんに盛り込んだ内容になるという。
4月13日に放送された第1話では、原作ファンにはお馴染みの「お言葉を返すようですが」というキラーフレーズが冒頭から登場。とある支店に届いた告発状から始まるミステリーの面白さに加え、今自分がいる環境に問題があるならばわきまえずに声を上げることの大切さや、池井戸原作の『半沢直樹』シリーズにも通ずる爽快な逆転劇が絡み合い、視聴者から絶賛の声を集めた。
外にはまだ桜がちらほら残っていたこの日、池井戸が初めて撮影現場を訪れた。出迎えたのは花咲舞役の今田美桜、舞のバディとなる相馬役の山本耕史、臨店班の上司である芝崎役の飯尾和樹、舞の叔父の(花咲)健役の上川隆也。「酒肴処・花さき」のセットの中で行われた、原作者とキャストのメディア初となるクロストークを一部編集してお届けする。


池井戸 ようやくここに来られました。僕ね、花さきのシーンが好きなんですよ。
上川 前のドラマの時からそうおっしゃってくださっていますけれど、それは、どうしてなんですか? 先生の作品の中にはない要素なんですか。
池井戸 そうなんです。もともと花さきは原作には出てこないんですが、ここがあると銀行内のギクシャクしたというかギスギスした感じがふっとほどけますし、登場人物のプライベートなところが立ち上がってくる。いいシーンだなぁといつも思って観ているんです。
山本 確かに、箸休めではないんですけど、ちょっと安心して、落ち着いて、スピード感が違う会話ができる場所ですよね。
上川 緩急の「緩」の部分が生まれるシーンになっている。
今田 撮影も、すごくリラックスした雰囲気の中でやっています。お料理も毎回、本当に美味しいんです!
飯尾 こちらのお店、値段も安いですよね。たぶん、家賃がかかってないんですよね?
池井戸 確かに、家賃がかかっていたらこの値段で出すのは無理ですよね(笑)。
上川 そんな事情も皆さんが知っていてくださると、より演じやすくなります(笑)。



――制作発表会見の際、池井戸さんは「花咲よ、風になれ!」というメッセージを送ってらっしゃいました。第1話をご覧になって、どんな感想をお持ちになられましたか?

池井戸 風になっていましたよ。
今田 なっていましたか!? やったぁ嬉しい!!
池井戸 新しい風になっていましたね。杏さんがずっとやってらっしゃった役を引き継ぐのはとても難しいと思うんですけど、完全に自分の役として昇華されていた。「今田さんの花咲、いいじゃん」みたいな感想がSNSにもいっぱい出ていましたし、良かったなと思っています。
今田 ありがとうございます。舞ちゃんは演じていて、すごく疾走感と爽快感があります。その中にずばっと、ぐさっとくる瞬間とか言葉が出てくるんですが、くすっと笑えるようなところもあるんです。そこの緩急というかバランスが、演じていてとても楽しいなと思っています。
山本 僕は役柄的に今田さんと常にご一緒させてもらっていますけど、例えば僕が後ろをついていくようなシーンで、背中から熱さが伝わってくるんですよ。セリフが大量にあるシーンの、本番の集中力もすごい。「支えてあげなきゃな」じゃなくて、「付いてかなきゃな」っていうふうに感じさせてくれますよ。



上川 今田さんとは酒肴処・花さきでしかお会いすることがなかったんですが、第1話のシーンを初めてご一緒させていただいたテストの場で、台本にはないけれども筋からは逸れない程度の会話をちょっと差し込んでみたんです。その時の反応から、きちんと花咲舞として対応してくださっている姿を目の当たりにすることができたので、そこからはもう何の遠慮もなくやらせていただいています。



飯尾 僕は、今田さんとは臨店班のシーンでご一緒しているんですが、パワーを感じていますね。僕の何気ない一言に対して、カウンターパンチを喰らう、みたいな……。
一同 (笑)
飯尾 生粋のドMなんで、嬉しいんですけどね。銀行内でのやり取りがほぼ全てなので「いってらっしゃい」「おかえりなさい」、たまに途中報告を受けるという感じなので、舞が外でどんなことをしているかは知らないんです。もちろん脚本を読んではいるんですが、1話のオンエアを観てびっくりしましたね。「あっ、こんなに黙ってないんだ」と思って(笑)。
池井戸 すごい迫力ですよね。「お言葉を返すようですが」って、あの言葉の後に何が来るかが、テレビ越しに見ていてもかなり怖いです(笑)。
飯尾 「何返されるんだろう!?」って思いますよね。
今田 ホントですか(笑)。



――みなさんは舞のように不正を見逃せず、「お言葉を返すようですが」とズバッと言うタイプですか?

今田 私は、プライベートでは「お言葉を返すようですが」って、一度も使ったことはないので……。
上川 これからもあんまり使わないでいいんですよ(笑)。池井戸先生は前回のドラマの原作となった『不祥事』という作品をお書きになるに当たって、先生の中にもなかなか思っていることを言えないとか、現状を突破できない、変えられないという思いはあったんですか?
池井戸 そうですね。会社って、理不尽なことがいっぱいあるんです。そういったことを、女性行員で権力も地位もない、何もない子がどんどん解決する小説って面白いんじゃないかなという着想で書いたものでした。それが1冊目の『不祥事』です。実は、ドラマのタイトルになった「花咲舞が黙ってない」というフレーズは、講談社文庫版『不祥事』のオビのキャッチコピーからきているんです。
一同 へーー!!
池井戸 それがドラマのタイトルになって、それを今度は続編のタイトルにしたんです。小説とドラマが、お互いに影響を与え合いながらできあがっている作品なんですよ。
上川 幸せなやり取りの中で生まれていった作品だと思います。



――今田さんは、前回のドラマを学生の頃にご覧になっていたそうですね。

今田 はい。高校生の時と、今回演じるにあたって改めて拝見しました。何度見ても元気と勇気をもらえるんです。数あるドラマの中で、すごく印象に残っているドラマでもあったので……最初にお話をいただいた時は「どうしよう!?」とは思いました。
上川 いや、勇気がいりますよ。どなたかが1回演じた役っていうのは。
今田 そうなんです! 大人気作でもありますし、杏さんの舞は知的で魅力的に感じました。私はそうはなれないなとも思いつつ。どうやって自分なりの花咲舞をみなさんと一緒に作っていくかというのは、最初はドキドキソワソワしていました。いざ撮影に入ってみたら、一つ一つのシーンについて、話し合う機会がいっぱいある現場なんです。そのおかげで新しい花咲舞ができあがっている、という感じがしています。

――別の俳優が演じている役を、今度は自分が……という難しさは、山本さんも感じていらっしゃるのではないでしょうか? 前回のドラマで上川さんが演じた相馬を、今回は山本さんが演じていますね。

山本 よく上川さんのことを、スタッフさんが「相馬さん」って間違えるくらいですからね。
上川 なんだかすみません。僕、一回席を外しましょうか(笑)。
山本 そりゃあ上川さんの相馬さんっていうのは一つの伝説というかね、前のドラマから観てくださっている方々は当然、そのイメージを持っていますから。同じ名前だけれども違う、新しいものとして僕もやらせていただいています。逆に上川さんがいらっしゃることが安心にもなっているし、僕としては非常に心強いです。
上川 さきほど池井戸先生が「花さきのシーンが好きだ」と。原作者の方にドラマオリジナルの部分に関してそうおっしゃっていただけるのは、とてもありがたいことなんです。だからこそ、このシーンの持っている意味や役回りは大事にしたいと思っていますし、1作目、2作目では、「花咲」のカウンターに大杉漣さんがいらっしゃいました。今回は僕がカウンターに立っていますが、大杉さんの面影を常にどこかで感じながら演じているんです。
池井戸 上川さんがいてくださっているおかげで、前のドラマのファンの皆さんも親近感を持たれていると思います。
上川 恐れ入ります。



――今後の展開というところでは、第5話あたりで原作にも出てくるあの「半沢直樹」がキャスティングされているという噂を耳にしたのですが……。

今田 原作を読んでいる方は、特に楽しみにしているところだと思います。
山本 注目どころですよねぇ。
今田 撮影はこれからなので、私たちも楽しみにしています。観てくださっているみなさんもぜひ、お楽しみに。
池井戸 撮影、頑張ってください。
一同 ありがとうございます!


(日本テレビ・生田スタジオにて)


『花咲舞が黙ってない』毎週土曜よる9時から日本テレビ系で放送中
(放送後TVerおよびHuluで配信) arrow_upwardページトップへ

★著者プロフィール

池井戸潤(いけいど・じゅん)
1963年、岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、11年『下町ロケット』で直木三十五賞、2020年野間出版文化賞、23年『ハヤブサ消防団』で柴田錬三郎賞を受賞。主な作品に「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、「花咲舞」シリーズ(『不祥事』『花咲舞が黙ってない』)、『シャイロックの子供たち』『空飛ぶタイヤ』『民王』『かばん屋の相続』『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『ノーサイド・ゲーム』『民王 シベリアの陰謀』などがある。最新刊は『俺たちの箱根駅伝(上・下)』。

arrow_upwardページトップへ

★関連作品



ドラマ原作『不祥事』『花咲舞が黙ってない』ほか
話題の池井戸潤作品を紹介するページ「春はいけいど」はこちらから
https://books.bunshun.jp/articles/-/8788

arrow_upwardページトップへ