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私の○○ベスト3
Vol.63 石田祥 私の好きな鳥ベスト3


1位 コガネメキシコインコ

2位 ワカケホンセイインコ

3位 ヘビクイワシ



 先日、友人との食事中に、何気なく「ワカケホンセイインコが好き」と言うと、大爆笑されました。人生で初めて聞いた鳥名だったそうです。皆さんは「ワカケホンセイインコ」と噛まずに言えますでしょうか。私は、十回は言えます。

 動物といえば、一般的には犬派か猫派にわかれますが、私は鳥派です。なぜ鳥が好きかというと、波長が合うからです。よく苦手と言われる点目や足が可愛く見えてしまいます。匂いや鳴き声も大好きです。神社へ行けばいつまでも鳩に餌をあげている子供でした。

 一位のコガネメキシコインコは、某花鳥園では破壊神の異名を持つほどなんでも齧ります。群れで行動するため、一羽が肩に乗ると、あっという間にコガネメキシコインコまみれになります。見た目は、太陽に向かって咲くダリアのように、鮮やかなオレンジ色をしています。フワフワした頭はまるで大輪の花。メキシコと名が付くのに、実際はメキシコに生息していません。ラテン系の陽気なインコです。

 舌を噛みそうなワカケホンセイインコは、その意味合いがわかればスラスラと言えるかもしれません。
 輪掛(わかけ)・本青(ほんせい)・鸚哥(いんこ) ※読みやすいように区切っています
 なるほど。輪を掛けた青っぽい鳥なのかと、イメージしていただけたら嬉しいです。こちらは青ではなく、若葉のような緑の羽に、渋い赤カブ色のクチバシをした中型インコです。このインコはあまり人懐こくはないのですが、強面と金切り声が私のツボにはまります。

 ベスト3のうち、一位と二位は決まりますが、困るのは三位です。好きなものは裾野のように頂点から広がっていきます。下にいけばいくほど同率が増え、私の中で三位は日替わりです。今回はあえて個人では飼えないヘビクイワシを推します。
 蛇喰鷲。漢字にすると強そうです。
 風貌は丹頂鶴に似ています。ぜひこの鳥のまつ毛を見ていただきたい。尾羽や風切羽ではなく、まつ毛です。エクステのような長さと量は驚くほどで、なぜこんな不思議な生き物がいるのかと、ため息が出てしまいます。

 好きなものに順位を振るのは意外と難しいですが、好きなものを挙げるのは簡単です。語れと言われれば、何時間でも語れます。明日はたぶん、三位が入れ替わっているでしょう。もしかしたら一位二位も、替わっているかもしれません。
 でも順位にかかわらず、すべてが三位圏内で、すべてが同率一位の日もあります。その対象がなんであれ、ベスト3に入りきらないほど好きなものがあるのは、幸せなことです。



石田 祥(いしだ・しょう)
1975年、京都府生まれ。2013年、「トマトのために」で第9回日本ラブストーリー大賞を受賞。翌年、『トマトの先生』に改題し、デビュー。著書に「ドッグカフェ・ワンノアール」シリーズ、『元カレの猫を、預かりまして。』『夜は不思議などうぶつえん』がある。2023年3月に刊行の『猫を処方いたします。』が話題となる。