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私の○○ベスト3
Vol.65 岩井圭也 忘れられないセコマの商品ベスト3


1位 カツ丼

2位 海老塩焼きそば

3位 ワイン



 皆さんは「セイコーマート」(以下、セコマ)をご存じだろうか。北海道民なら100%に近い認知度を有する(であろう)コンビニである。コンビニといっても、セコマでは生鮮食品も普通に売られている。さながら小規模なスーパーマーケットなのだ。
 私は北海道の大学出身なのだが、学生時代に通算4年ほどセコマでアルバイトをしていた。そんな私にとって、忘れられない商品ベスト3を紹介する。

 第3位は「ワイン」である。
 セコマは酒屋にルーツがあるとかで、アルコールのコーナーがやたら充実している。特にワインはすごい。
 毎年11月、ボージョレ・ヌーボー(セコマではこう表記する)の解禁日が近づくと、セコマの店内には「ワ~インを~飲もう~」という歌が流れていた。今はわからないが、当時はそうだった。30代後半になった今でも、ボージョレ・ヌーボー解禁の報を聞くとこの歌を思い出す。

 第2位は「海老塩焼きそば」だ。
 当時セコマには100円のパック麺シリーズ(今は128円らしい)があった。パスタや焼きうどんなどもあったが、そのなかでも屈指の人気を誇っていたのが塩焼きそばだ。容器が密閉されているので、レンジで温めすぎると爆発する。温める前に端っこを少し開けておくのがコツだ。
 最初に見かけた時には「麺が1食分で100円!?」という驚きで腰を抜かしそうになった。貧乏学生だった当時は飽きるほど食べた。実際、一時期飽きていた。

 第1位は「カツ丼」。
 セコマではいち早く、惣菜の店内調理を導入していた。「ホットシェフ」である。出来立てのおにぎりやフライドチキン、弁当惣菜のうまさは、他のコンビニとは一線を画していた。
 なかでも毎日のように食べていたのがカツ丼だ。体育会剣道部で週6日稽古をしていた私にとって、カツ丼はうまくて安くてボリュームのある、理想のメニューだった。甘辛いタレ。滲み出る脂。今でもたまに食べたくなる。
 セコマのカツ丼がなければ、きっと空腹で身体を壊していただろう。つまり、あのカツ丼があったからこそ、作家としての今もあるのだ……と言ったら、さすがに言い過ぎか。



岩井圭也(いわい・けいや)
1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。著書に『水よ踊れ』『生者のポエトリー』『最後の鑑定人』『楽園の犬』などに加え、書き下ろし文庫シリーズ「横浜ネイバーズ」がある。