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桜木紫乃 最新刊『青い絵本』――岐路に立ち、惑う人々に贈る喪失と再生の記憶。

桜木紫乃 最新刊『青い絵本』――岐路に立ち、惑う人々に贈る喪失と再生の記憶。

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作家、編集者、絵本セラピスト、ラジオパーソナリティー、書店員――さまざまな形で絵本に関わる人々が、絵本を通じて過去と対話し再生する姿を、静謐な筆致で紡ぎ出す。表題作ほか全5話収録、短編の名手が人生の光と影を描いた珠玉作品集。

『青い絵本』購入はこちらへ →https://www.j-n.co.jp/books/978-4-408-53867-9/
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☆桜木紫乃さんが自作を朗読


『青い絵本』収載の短編「なにもない一日」内に、ラジオパーソナリティが番組内で朗読する『なにもない一日』という掌編小説が登場します。この作品を著者・桜木紫乃さん自身が朗読! じっくりご堪能ください。

朗読はこちらから ▼
https://www.youtube.com/watch?v=GUXN09n0QVQ arrow_upwardページトップへ

☆全国の書店員さんから熱いご感想が続々到着!

『青い絵本』は、紙の本で手にしてほしい美しい一冊です。スピンの色にも胸がきゅっとなりました。青に込められた深い愛に、静かに優しく包まれます。きっとずっと大丈夫。
うさぎや 矢板店 山田恵理子さん

静かに流れていく物語のなかで、とめどなく溢れていく登場人物達の感情に、飲み込まれては飲み込んで……でもラストではみんな穏やかで、私の心も静かに満たされていました。
TSUTAYA サンリブ宗像店 渡部知華さん

表題作「青い絵本」での、美弥子さんと好子さんの関係性に得難い絆を感じました。何度別れたとしても、出逢うべき人とは、深いご縁でつながっている。そんな目に見えないけれど、確かに存在している奇跡を感じました。
紀伊國屋書店 福岡本店 宗岡敦子さん

絵本は文字が少ないけれどその時の感じ方で思いが深くなる。本文の優しい語りが心に染みわたりました。美しいアートのような本(作品)でした。
未来屋書店 武蔵狭山店 柴田路子さん

描かれるのは自分の人生ではないですが、読後の気持ちが自分と重なり、救われたように感じました。
ジュンク堂書店 滋賀草津店 山中真理さん

本のカバーの青に心を奪われました。短編の一つ一つが心に染み、ゆっくり流れる時間と「言葉」の問いかけが私を優しく包み贅沢な安らぎを頂いたかの様な感覚でした。
BOOKSえみたす 富士吉原店 望月美保子さん

登場人物達のざらついた気持ち、ぶつけどころのない気持ちが押し寄せてきて、胸が張り裂けそうなくらいの共感を覚えます。それぞれが、毅然と、自分らしく生きていこうとする姿に、一歩踏み出す大切さを教えてもらいました。
文真堂書店 ビバモール本庄店 新井さゆりさん

5人それぞれの人生の分かれ道に一歩踏み出して行く姿がとても心にしみました。どのお話も一冊の絵本が入ることにより心が温まり優しい気持ちになれました。
未来屋書店 天理店 田上さん

色んなモノを削ぎ落し残った言葉は、長く生きるほど沁みてくる気がしました。人生の中盤を過ぎると、誰といようか、何をしようか、ゆっくり考えながら生きていくのもいいですね。
未来屋書店 入間店 佐々木知香子さん

表題作「青い絵本」で、好子も美弥子も互いに、あなたが好きだ大切だ、と言葉にして伝えることはないが、それぞれの行動が、あなたが好きで大切だと伝えているように感じました。炎のように激しい感情ではなく、雪がしんしんと降り積もるような静かだけど深く大きな感情。すごく胸に残りました。
くまざわ書店 調布店 山下真央さん

「生きる」とは永遠に続く自分探しの旅なのかもしれない……恋しい人肌の温もり。かけがえのない縁。果てしない郷愁、そして忘れがたき哀惜。語りかけるような言葉の力が全身に染みわたる。凍りついた日常を緩やかに溶かす珠玉の一冊!
ブックジャーナリスト 内田 剛さん arrow_upwardページトップへ

☆刊行記念特別対談 岡田達信×桜木紫乃

大人が絵本で癒される理由

桜木紫乃さんの新刊『青い絵本』に収録された短編「卒婚旅行」には「絵本セラピスト」を志す主人公が登場します。この仕事を日本で初めて考案した、絵本セラピスト協会代表の岡田達信さんとぜひお話ししたいという桜木さんの熱望が叶い、刊行を控えた10月半ば、オンラインでの初対面が実現しました。モニター越しに盛り上がった対談の模様、ボリュームたっぷりにお届けします。
構成・文/編集部

▼絵本セラピストになった友人がつないだ縁

岡田:やっとお目にかかれましたね!

桜木:はい! でも今回、せっかく北海道にお越しになるのに、直接お会いできなくてごめんなさい。講演をされる釧路までは片道5時間かかってしまい、日帰りが難しくて。

岡田:北海道は広いですものね。僕、札幌や旭川には講演や絵本セラピストの養成講座で年に数回訪れているんです。釧路では絵本セラピストの大津洋子さんにアテンドしていただきますよ。

桜木:以前雑誌で、岡田さんのご著書『新・絵本はこころの処方箋』を紹介した時にも書いたのですが、大津さんと出会わなければ、私、絵本とも出会わなかったと思うんです。親に絵本を読んでもらった記憶もなくて、大津さんのおかげでやり直せていることがたくさんあります。

岡田:そうなんですか。

桜木:彼女が六十歳になった時、「桜木さん、私、絵本セラピストになる!」って宣言されたんです。釧路でラジオパーソナリティとして活躍し、私もイベントのMCで長年お世話になってきた方が、ずっとやってみたかった新たな道に向かうーーその姿を目の当たりにして、私も絵本に興味を持ち始めました。すると、ほぼ同じタイミングで、絵本を書いてみませんか? という依頼が来たんですよ。

岡田:不思議ですね。

桜木:本当に不思議。数年前に『家族じまい』という小説を書いたあと、番外編みたいな形で、『いつか あなたを わすれても』という絵本を出したんです。それを大津さんがとても喜んでくれました。尊敬する人に喜ばれると調子に乗る性質(たち)なので、そこから更に開けてきたことがある気がします。彼女のおかげで、こうして岡田さんにお目にかかることができましたし。



岡田:新作『青い絵本』をゲラで読ませていただきました。一冊全部、絵本がテーマで、とてもびっくりしましたし、時間を忘れて没頭できました。

桜木:ありがとうございます。これも大津さんと出会わなければやらなかったことです。入れ子構造の話は世の中にいくつもあるけれど、ひとつの短編の中に一冊、架空の絵本を入れて物語を作るのは、あまりなかったと思うんです。

岡田:一編読むごとに「こんな絵本、あったっけ?」と、記憶の中の絵本を探してしまうぐらい、中に出てくる絵本はリアルに構成されていて、すごいと思いました。何よりも、絵本セラピストを初めて小説で取り上げていただいたのがとても嬉しくて。アンソロジー『Seven Stories 星が流れた夜の車窓から』(短編「卒婚旅行」初出書籍)が発売された時は、絵本セラピスト業界が「おお!すごい!」「認知されてる」と、ざわめきましたからね。

桜木:あのお話は、大津さんに仕事の内容を詳しく教えてもらいながら書きました。大津さんも、絵本セラピスト協会の講習を受けたと聞いています。絵本セラピストになるためには、どのくらいの訓練が必要なのですか?

岡田:基礎的な講座は四日間でやります。二日間で基礎を学び、さらに、宿題を出して発表してもらう二日間を設けています。でも、それを終えてからが本当のスタートで、実践で経験を積むことが大事ですね。

桜木:絵本セラピストになりたくて、岡田さんの門戸を叩き、意欲的に取り組んでいらっしゃる方は多いと思いますが、向き不向きというのはあるのですか?

岡田:誰でもできるんですよ。誰でも気楽にできないと意味がないとも思っています。協会で掲げているスローガンがあって、「絵本でうっかり世界平和」なんです。「ガッツリ」「熱く」じゃなくて、「うっかり」。あら、平和になっちゃったわね、みたいな感じですね。

桜木:それ、いいですね。最近「うっかり」が許されなくなっているでしょう。「うっかり世界平和」。とても和む一言で、コピーとして魅力的だと思います。

岡田:ありがとうございます。僕はよく、絵本セラピーを料理にも例えるんです。材料とレシピがあれば、誰でも料理はできますね。でも、世界中にレストランがあって、お店に行けば誰かに会える、あそこの店主は腕がいい、など、いろんな理由でレストランが成り立ちます。絵本セラピストは、レストランのオーナーシェフになってほしいんです。材料となる絵本は世界中どこにでもあるので、誰でも絵本セラピーができるように、「絵本セラピーのやり方」というレシピは公開しています。そして、全員が五つ星レストランを目指す必要はなくて、おうちカフェでもいいし、子ども食堂でもいいし、キャンプファイヤーでもいいんです。

桜木:表現の方法は自由であれ、と。

岡田:その人自身に適した形でお店を開けばいいなと思っています。


対談全文はこちらへ→https://j-nbooks.jp/novel/columnDetail.php?cKey=230

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☆著者インタビュー

「背負ったものを置いて、ちょっと気が楽に。この本がそんな場所になればいいなと思います」

最新刊『青い絵本』発売を記念し、桜木紫乃さんご自身の絵本への思いや絵本体験などをうかがいながら、本書の魅力に迫ります。
文・構成/三浦天紗子 写真/泉山美代子

* * *


Q:『青い絵本』、人生の節目や終わりを意識せざるをなくなった登場人物たちが、静かに抑え込んできた悲しみや憤りを、痛みを伴いながらも開放して、明るい方に向かって歩み出すさまを描いたオムニバス作品集ですね。とても面白かったです。

桜木:ありがとうございます。実は関係者以外の感想を聞くのがきょう初めてで、ドキドキしています。というのも、私は女でも男でもひとりで生きていけるのが人としての美しさだと言ってきて、これまでずっとそういうお話を書いてきたつもりなんですが、今回はどれも二人とか二・五人とかになる話なんですよね。本が書店に並ぶ前の時期なのでとりわけナーバス状態で、「桜木紫乃的に変じゃない?」と担当編集さんに詰め寄っては困らせたりしているタイミングなので……。

Q:いえ、変だなんてことはないです。でも桜木さんの作品集としてはやり切れなさが薄いというか、小さな希望を感じる短編揃いで、心洗われる気持ちで読めました。
 驚いたのが、五つの短編すべてに作中作として、桜木さん作の「架空の絵本」が織り込まれていたことです。絵本をモチーフにするにしても、すでにある絵本ではなくてすべてオリジナルで書くというひと作業が加わっているわけですよね。なんて大変な挑戦をなさったのかと感服しました。

桜木:既存の作品を入れると著作権の関係でいろいろと面倒くさいので、「いっそ自分で書いてしまえ」というのはよくやるんです。歌詞も書いたりしますし、作中に歌を入れるときも自作してしまう方で。今回も、書いているときは楽しかったんです。小説の可能性として、中にもう一冊、本があるというのはそそられるし、「この絵本を読んでみたい」と思った誰かが本当に検索してくれたらいいな、と思っていました。

Q:私、まさに最初、あれこれインターネットで調べたんです。

桜木:ほんとに? うれしいな。

Q:本書には五編が収録されていますが、最初の「卒婚旅行」に出てくる絵本がサット・ハミルトンの『ほら、みて』ですよね。なんだろう、こういう有名な絵本があるのかな、作家がいるのかなと検索したら……。

桜木:出ないでしょう。最初、その短編は文藝春秋のアンソロジーに載ったのですが、校閲の人もみんな探したと聞いて、NHKのど自慢大会の合格の鐘の音がカンカンと脳内で鳴り響いたような気分でした。やったーと。サット・ハミルトンは、「釧路川音頭」を歌っている佐藤晴美さんが外国人になりすますときに使う別名なんです。FMくしろのリスナーならピンとくると思いますが、もちろん絵本作家のサット・ハミルトンは実在しません。

Q:そう言えば、「卒婚旅行」の語り手は〈晴美〉なんですね。晴美は絵本セラピストの資格を取って、すれ違っている夫と卒婚したいと考えているわけですが……。その「絵本セラピスト」というのも、架空の仕事なのかなと思ってリサーチしました。

桜木:実際にあるんですよ。フリーアナウンサーの大津洋子さんという方のある宣言がきっかけで知ったんです。彼女が「六十を境に、私、絵本セラピストになるから!」と宣言して実行なさった。いまは私のトークイベントのときにMCをお願いしていますが、基本、絵本セラピストです。
 何か不思議なご縁で回っているなと思っていた矢先に、児童書の分野で何か書いてみませんかというお話が来て、それで絵本『いつかあなたをわすれても』を書いたんです。ちょうど認知症になった母との関わりから『家族じまい』という小説を書いた後で、そのふたつの作品がいい補完関係になっている気がします。
 そんなこんなで、数年の間に急激に絵本との距離が縮まったんですね。そうでなければ、私もここまで絵本に興味を持つということはなかったと思います。


インタビュー全文はこちらへ→https://j-nbooks.jp/novel/columnDetail.php?cKey=228

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☆著者プロフィール

桜木紫乃

さくらぎ・しの
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞。07年同作を収めた『氷平線』で単行本デビュー。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で直木三十五賞、20年『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。ほかに『星々たち』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『裸の華』『緋の河』『砂上』『ヒロイン』『谷から来た女』、絵本『いつか あなたを わすれても』(オザワミカ・絵)写真絵本『彼女たち』(中川正子・写真)など多数の著作がある。


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